家族間で家事分担していているはずなのに、妻の負担が重くなることは多いはず。
その原因として、家事研究家の佐光紀子さんは「家族のため、完璧に家事をこなすことが愛情だと勘違いしている女性が多いのが問題なんです」と話す。
本来はやる必要がないにもか関わらず、家族のためだと思って家事をやり、その結果家族の自立を阻んでしまうこともあるというのだ。
台所周辺の「無理にやらなくていい&やってはいけない家事」を紹介する。
凝った料理を作る
「調理が手間で、片づけも大変な揚げ物や、時間のかかる煮物料理など、凝った料理を家庭で作る必要はない!」
と言うのが、今回教えてくれた家事の専門家たちの共通意見だ。
「専門店のからあげやコロッケがおいしいのは、大量の油で揚げているから。
私は家庭で出せない味を楽しむと割り切り、揚げ物は買うと決めています。
オムライスやグラタンも外食で楽しむ料理とし、家では作りません」(シンプルライフ研究家のマキさん)
時間管理術研究家・料理研究家の浅倉ユキさんは鍋料理をフル活用しているという。
「野菜がたっぷり摂れ、同じ具材でも、スープを変えるだけでまったく違った味が楽しめます」(浅倉さん)
意識改革という意味で、手作り料理こそが愛情の証と思い込むのもやめた方がいいという。
「パンを手作りするお母さんは素敵ですし、料理が好きならよいのですが、やらないといけないものと思わない方がいい。
おいしいパン店を知っているお母さんも同じくらい素敵であることに気づいてほしいですね」(片づけアドバイザーの石阪京子さん)
だしを取る
「パックだしを使うことに罪悪感を持ったり、責める人がいます。
けれどもパックであれば、だしを取った後のかつおぶしや昆布のだしがらが出ないので実は食品ロスの解消に一役買っているんです」(マキさん)
手間をかければおいしくなるわけでも、愛情の証になるわけでもないことを忘れずに。
作りおき」をする
「休日に時間を割いて大量の総菜を作っておいても、日が経てば味が落ち、食べきれずに捨ててしまうことも。手間と食品ロスを防ぐためにもおすすめなのは“半調理”。
料理を作り上げるまでしなくても、ねぎを刻んでおく、ブロッコリーをゆでておくだけで、毎日の調理が楽になります」(マキさん)
献立に悩む
献立を毎日3食考えるのが面倒という人は多いようだが、「そういう人は、毎週月曜はシチューなど、曜日ごとに献立を決めちゃいましょう!
時間をかけて考えた方がおいしい料理ができるわけでも、家庭で新作料理を出し続けなければいけないわけでもありません。
そこは肝に銘じて!」(浅倉さん)
包丁・まな板を毎日使う
「肉や魚などは、キッチンばさみで切って調理できます。そうすれば、まな板を洗う手間が省けますし、まな板を使わなければ、雑菌の温床になりにくく、キッチンも衛生的に保てます。
野菜もキッチンばさみで切って、そのまま鍋やフライパンに入れれば、水切りボウルなども不要に」(浅倉さん)
“面倒な食材”ばかり買う
「買い物をするときは価格だけでなく、下ごしらえが面倒な食材かそうでないかも意識しましょう。面倒な食材とは、たけのこやかぼちゃ、里いもなど。
切ってすぐ使える葉野菜類やトマトなど、そのまま食べられ調理が時短できる食材しか選ばない、と決め込んで買い物するのもおすすめ」(マキさん)
パッキンがあるものを買う
「パッキンタイプの水筒や弁当箱などは凹凸が多いため、汚れがたまりやすく、洗ってもカビが生えやすい。分解して洗うのも手間ですし、部品をなくしたときもやっかいです。
最近はパッキンと一体化したシームレスタイプの水筒や弁当箱も。日用雑貨は構造がシンプルなものを選んで」(浅倉さん)
きちんとした朝ご飯を作る
「朝ご飯をしっかり食べると成績が上がるなどとし、焼き魚に煮物にと、旅館並みのメニューを作るよう学校が推奨してくるケースも多いようですが、朝ご飯と学力に関するエビデンスはありません。
クッキーに牛乳、果物でもプラスすれば朝の栄養分は充分。
火を使う必要もありません」(石阪さん)
毎日スーパーマーケットに行く
「ネットスーパーなら余計なものを買わずにすんで経済的。一定金額以上で送料無料になるので、買い物に行く時間と労力が減らせます」(浅倉さん)
お客さま用食器を使い分ける
「めったに使わないお客さま用食器と、普段使いの食器を分けていませんか? その分スペースがとられ、掃除も大変に。
お客さまに出しても恥ずかしくない食器を普段使いすれば、食器棚がスッキリします」(マキさん)
台ふきんを使う
「雑菌の温床になりやすい台ふきん。わが家では、キッチンペーパーとアルコールスプレーで代用しています。
衛生的ですし、使い捨てなので洗浄や漂白の手間も省けます」(浅倉さん)
洗った食器の下に敷いた後のペーパーにアルコールスプレーをかけ、シンクを拭くなどして使えば無駄もなし!
シンク3点セットを置く
「水切りカゴ、三角コーナー、洗いおけの3点セットは、カビや雑菌の温床に。三角コーナーはビニール袋で代用。食器はその都度すぐ洗えば洗いおけは不要に。
洗った食器は重ねたキッチンぺーパーに置けばOK」(石阪さん)
キッチンツールをため込む
「菜ばしや玉杓子をいくつも持っていませんか? キッチンツールは少ないほど探しやすく、保管スペースもとられず、洗い物も減っていいことずくめ。なるべく減らして。
使わない調理器具も思い切って処分を」(マキさん)
コンロまわりに物を置く
「油汚れは時間が経つと固まり、ほこりが付着すると落としづらくなります。コンロまわりに何も置かなければ、油がかからず掃除も楽。壁などにはねたら調理後すぐ拭けば簡単に落ちるので、油はねガードも不要です」(石阪さん)
【プロフィール】
家事研究家・翻訳家 佐光紀子さん/重曹や酢など自然素材を使った掃除講座のほか、翻訳家としての経験から海外の家事事情などの研究も行う。『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社新書)など著書多数。
時間管理術研究家・料理研究家 浅倉ユキさん/「主婦のストレス値を下げる」をテーマにさまざまな事業を展開。「全日本ズボラ主婦連盟」の代表を務める。近著に『あな吉さんの家事をやめても愛されるズボラ主婦革命』(1万年堂出版)。
片づけアドバイザー 石阪京子さん/宅地建物取引士、不動産会社の経営者として家づくりにかかわるなか、顧客のための「片づけメソッド」が評判を呼び、現在は全国各地でレッスン・講演を行う。近著に『人生が変わる 紙片づけ!』(ダイヤモンド社)。
シンプルライフ研究家 マキさん/「ムダな物を持たない、ムダな家事はしない」をテーマに、シンプルで心地よい暮らしを発信するYouTubeチャンネルやSNSが人気。『なくす家事』(KADOKAWA)など著書多数。
取材・文/植木淳子 イラスト/なとみみわ
※女性セブン2024年5月2日