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時代とともに変わる“食と健康”の常識 「ひじきの鉄分は減少」「乳製品で骨が丈夫になるというデータはない」

“食と健康”の常識は(写真/PIXTA)

“食と健康”の常識は変化している(写真/PIXTA

 

あなたがいま、“体のために”とせっせと口に運んでいるその食品は、とっくの昔に効果が否定されているかもしれない──。最新の知見や実例をもとに具体例を紹介する。

 

 トマトやレタス、にんじんをサラダボウルいっぱいに盛って食物繊維とミネラルを摂取、納豆とさば缶でたんぱく質を補いつつ、デザートはつやつやした大きなりんごを丸かじり──野菜に果物、青魚や納豆はいずれも栄養豊富で病気を遠ざける“体にいい”食品の代表格であり、積極的に食卓に取り入れることが推奨されてきた。

 

しかしその常識は、日進月歩の調査や研究によって次々に否定されつつあると立命館大学生命科学部教授の久保幹さんは指摘する。

 

「同じ食品であっても、土の状態や環境、品種改良や農薬の種類などあらゆる要因によって成分や栄養価は変化していきます。

つまりもともと“健康食”とされていても、ある時期からそうでなくなっているケースがあるということ。

 

 実際、いま流通している野菜や果物は総じて鉄分やカルシウムなど、ミネラルの減少が顕著です」

いちごもりんごも昔とは別の食べ物

 ビタミンによる抗酸化作用に食物繊維の整腸効果と健康効果が目白押し。“朝の果物は金”とも称されてきたが「それははるか昔の話です」と高雄病院理事長の江部康二さんは断じる。

 

「いま店頭に並んでいる品種改良されたブランドもののいちごと、昔の人が甘みを足すために砂糖や牛乳をかけて食べていたいちごはまったく別の食べ物です。

 

1粒のサイズが大きくなり、何よりも消費者の嗜好に合わせて糖度が高くなった。

その傾向は、ぶどうやみかんなどにも当てはまり、いちごに限ったことではありません。

 

 果糖の過剰摂取は百害あって一利なし。

穀類や砂糖のブドウ糖など、ほかの糖類と比較すると血糖値はほとんど上昇しないものの、中性脂肪に変わりやすく、肥満を招きやすいのです。

 

 加えて、果糖はブドウ糖の数十倍の速度で老化の原因物質の1つとされる『AGEs(終末糖化産物)』に変わります。

AGEsはたんぱく質に糖がへばりついたもので、動脈硬化や糖尿病合併症などの罹患リスクを高めるうえ、しわが多くつやがなくなるなど、見た目にも影響を及ぼします」(江部さん)

 

 果物の栄養素が減少の一途を辿っていることは調査や測量の現場でも明らかだという。久保さんが指摘する。

 

「青森や長野のりんご農園で継続的に調査を行っていますが、年を追うごとにミネラルをはじめとした栄養成分の量が少なくなっています。

その背景にあるのは、土壌を中心とした環境変化です。

 

日本の原風景を思い出してみれば、昔は集落の近くに里山があり、多くの動植物が生息し、土にも微生物が多く、肥料も人や家畜の糞尿をたい肥とする有機肥料が主流だった。

 

ミネラル豊富な肥料を微生物が分解し、それを栄養に植物が育っていたのです。

しかし現在は、ほとんどの農家が化学肥料を使っているうえ、土に含まれるミネラル成分も減っています。

作物を育てる土壌にミネラルが少なければ、果実のミネラルが含む分も当然、減っていくことになります」

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