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「見合いで通帳持参」難しいシニア婚活の的外れ感 亡くなった前妻の話ばかり「さみしい」連発も

お見合いの席で初対面の女性に貯金通帳を見せた男性。その意図は……(写真:Luce/PIXTA

 

近年、シニア婚活をスタートさせる人が多い。

そこには、平均寿命が延びたことや、熟年離婚が増えていることが背景にある。

人生120年時代といわれるようになった昨今、50代、60代ではまだ半分の人生が残っている。

その時間をパートナーと過ごしたいと思う人が増えたのだろう。

 

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。

 

今回は、シニア婚活の現状を綴りながら、どうも的外れな婚活をしてしまうシニア男性たちの話をしたい。

増えているシニアの離婚と婚活

婚姻期間20年以上の夫婦が離婚することを“熟年離婚”と呼ぶ。

やや古いデータなのだが、令和3年の離婚件数は、18万4386組。

そのうち約21.1%の3万8968組が熟年離婚だった(厚生労働省調べ)。

 

 

そして、熟年離婚は妻側からの申し出が多いといわれている。

なぜかといえば、夫の定年を見据えて退職金や年金分割を視野に入れ、自分の取り分を計算し、取れる時期を見計らって言い出すからだ。妻側にとっては、何年もの年月をかけた計画離婚なのだ。

 

そして、離婚して1人になってみると男女ともに、“独身はやっぱり寂しい”と思い、再婚を考えるようになる。

 

また、先行き不安な時代なのに、平均寿命は延びる一方だ。そうなると50代以上の初婚者も、「1人で歳を取っていくぐらいなら、パートナーがいたほうがいい」と考えるようになる。

こうして、シニア婚活が盛んになっていく。

 

だが、相談所を経営する筆者の肌感覚でいうと、若い世代に比べて、スムーズに成婚できない人たちもまた多い。それは、これまでの経験が考え方から柔軟性を奪い、人を頑固にしていくからだ。さらに、できあがっているライフスタイルを相手に押し付けようとするので、なかなかうまくいかない。

お見合いの席でいきなり相続の話

先日、お見合いを終えたとしえ(55歳、仮名)が、連絡を入れてきた。

「とても不愉快なお見合いでした」

 

お見合いした相手はやと(64歳、仮名)は、年収が1500万円あるエリートだった。

「飲み物を注文終えた次の言葉が、『私は、未入籍婚を希望しています。

 

娘がいるので、再婚相手にもし子どもがいると、財産相続の問題が出てくるから』と言うんですよ。

あまりにも唐突だったので、“はっ?”と思わず言ってしまいました」

としえには、20代後半の息子がいた。

 

「息子は自立して働いていますし、親の持ち物を当てにするような子には育てなかった。それに、離婚した元夫はかなりの資産家で、息子はそちらを受け継ぎます。私の再婚相手の財産なんて当てにしていませんよ」

さらに、続けた。

 

「初対面で顔を合わせるなり相続の話だったので、ドン引きしてしまいました。こういう話題は、お付き合いが始まって、結婚話が出てくるようになってからすることじゃないですか」

 

滔々とお金の話をしている男性を見て、としえは「ずいぶん欲深いんですね。でも、心配ご無用です。

私は、あなたと結婚しませんから」と、心の中でつぶやいたという。

 

この連絡のあと、筆者がお見合いのお断りを入れようとサイトを開くと、はやとの相談室からは、『交際希望』の連絡が入っていた。そして、交際を希望する理由がこう書かれていた。

 

「お見合いで話しただけでは、どんな人がよくわからなかったので、もう一度会ってみたい」

お見合いは、相手がどんな人なのかを探るべく、仕事、趣味、普段の生活スタイルについて楽しく話すのが通例だ。

 

それがいきなり「財産を再婚相手の子どもに渡したくないから、事実婚を希望する」と話されたら、相手は不愉快な気分になる。

 

その想像力もなく、「どんな人だかよくわかならかったから」と交際希望を出してくるのは、かなりコミュニケーションのピントがズレているではないか。

そこはかとなく香るナフタリン臭

お見合いの席で、いきなりお金の話をする男性は、50代後半、60代のシニアに多い。こんなケースもあった。

 

まさえ(60歳、仮名)がお見合いをしたかずお(67歳、仮名)は、ティーラウンジの席に座るなり、バッグの中から貯金通帳と土地の権利書を取り出して言った。まさえは再婚、かずおは初婚だ。

 

「貯金がこれだけあります。持ち家とその土地もあります。年金生活ですが、お金には不自由をさせません」

 

“お金に苦労させない”と伝えることが、婚活を有利に働かせると思っているのだろう。お見合いを終えたまさえは、筆者に言った。

 

「赤の他人の貯金通帳を見るのって初めてだったから、ドキドキしちゃいました。じっくり見て、1、10、100、1000、10000……と数えるのもはしたないし(笑)。『はぁ』と言ってチラ見して、視線を逸らしました。土地の権利書は、開きもせずにお返ししました」

 

さらに、こう続けた。

ティーラウンジで会うなり、ナフタリンの臭いが鼻をついたんです。おそらくタンスに吊るしてあったスーツを、お見合いのために朝ひっぱり出してきたんじゃないでしょうか」

 

 

これは、シニアの婚活ではよく聞く話だ。

ナフタリン臭だけではない。

クリーニングから戻ってきたスーツをそのままクローゼットにしまい込み、それを着てきたときの石油臭。

しばらく着ていなかったスーツをクローゼットの奥から出してきたときのカビ臭。

 

シニアを対象にした婚活パーティでは、パーティ会場全体にこれらの異臭が漂っていることがある。

 

仕事をリタイアすると、スーツを着る機会もなくなる。婚活を始めることになったら、まずはスーツの臭いをチェックしておいたほうがよい。

 

また、先述した財産相続の話もそうだが、お見合いのときにお金の話をするのは、御法度。

どのくらいの収入があるか、財産があるかを相手に伝えるのは、結婚話が具体的になってからのことだ。

もちろん、まさえはかずおに“交際辞退”を出した。

前妻に未練たっぷりのシニア

結婚歴のないみやこ(59歳、仮名)が、離婚歴のあるみつのり(63歳、仮名)とのお見合いを終えて、“交際辞退”の連絡を入れてきた。

 

「今日の方、奥様を亡くしてから、まだ半年しか経っていないというんですよ。それで、もう婚活するのも驚きなのですが、話をしている内容が、『毎日1人で食事をするのはさみしい。生活をしていても張り合いがない』と、『さみしい』を連発していたんです」

さらに、みやこは続けた。

 

「死んだ奥さまは、家事が得意で料理上手。家庭的な人だったそうです。私、どちらかといえば、家事も料理も苦手です。

家庭的な奥さんと比べられるのは嫌だなと思ってしまいました」

話をしていてもつまらなく、時間が経つのをとても長く感じたそうだ。

そこで、45分を過ぎたあたりで話の切れ目を見つけ、「では、そろそろ」と、みやこはお見合いを切り上げようとした。

 

そこでお見合いは終了となったのだが、2人でティーラウンジを出ると、みつのりが言った。

「時間も夕食どきですし、これから軽く食事をご一緒しませんか? もう少し、あなたの話を聞きたいし」

 

やっと解放されると思っていたみやこは、うんざり。

「これからもう1つ用事があるので、これで失礼します」と言った。するとみつのりは、「では、駅まで一緒に歩いていきましょうか」と、なかなかみやこを解放しようとはしなかった。

 

一刻も早く1人になりたかったみやこは、「ごめんなさい。トイレに寄って、電話をしてから帰ります」と、みつのりを振り切るように、その場を離れてトイレに向かったという。

「離婚相手を痛烈に批判」もダメ

死別した配偶者は、美化されがちだ。どんなに素晴らしい相手だったとしても、お見合いの席で、その思い出話を未練たっぷりに話されても、いい気持ちになる女性はいない。

 

また離婚の場合、自分を正当化し、別れた相手だけを痛烈に批判するのも聞いている側は心地よいものではない。

 

シニアになると、それまで積み上げてきて経験がその人の価値観を作っていく。それを相手にわかってもらおうとしても、相手にも歴史と価値観がある。

 

お互いの考え方や結婚への価値観が、ピッタリと合致することは難しい。

シニアの婚活に大切なことは、お互いを許容し合い、認め合える広い心と優しさを持つことなのだ。 


鎌田 れい 仲人・ライター