保険各社にとって「がん保険」は主力商品の一つだが、喧伝される“セールストーク”に不要に不安を煽られてはいけない。冷静にがん保険の加入を検討するために、保険会社の売り文句の「本当の狙い」を紐解いていく。
「若いうちに入れば保険料が安く済む」
「がんの保障に特化したがん保険は、その他の病気やケガをカバーする医療保険に比べ保険金の支払いリスクが低く、月額保険料が安く設定できる。
だから顧客に勧めやすいのです」
そう明かすのは、大手生命保険会社の営業マン。なかでも保険会社にとって“うまみ”が大きいのは若年層だという。
「“若いうちに入れば保険料が安く済む”というのがセールストークの定番ですが、実際20~30代でがんを患う人は数%に過ぎません。もし将来的に罹患したとしても、大半が70代です。
たとえ安い保険料でも数十年にわたって払い続けてくれるのですから、若年層は保険会社にとって“おいしい客”なのです」
例えば30代で月額保険料3000円のがん保険に入り70代まで保険料を払い続けた場合の総額は140万円を超えるが、「保険会社が100万円のがん診断給付金や日額1万円の入院給付金を払ったとしても、十分に元が取れる商品設計になっている」(同前)というのだ。
「高齢でも入れる」「保険料が一生上がらない」
「古い保険商品は保障期間を60歳や65歳までとするものが多く、50代後半になって『もうすぐ保障がなくなる』と焦って相談に駆け込む人が少なくない。
がん保険はそうした人の受け皿になってきた。
その他の医療保険に比べて審査が緩く、何歳でも契約しやすい特徴があるからです。
『一度がんになったらがん保険に入るのが難しくなる』『がん治療には、公的医療保険で賄えない思わぬ出費が生じることもある』といった営業マンの話を聞いて、加入を検討する人は多い」(同前)
もちろん多くの保険会社は顧客のニーズと利益を考えた上で商品を提案する。
だが、大手生保会社での勤務経験があり、保険に関する著書も多いFPの横川由理氏によれば、注意したい営業文句もあるという。
「『高齢でも入れる』を売りにするがん保険もありますが、高齢で加入すれば保険料は割高になる。
ある程度保障を充実させれば、月の保険料が1万円を超えることもざらです。
また『保険料が一生上がらない』という謳い文句もよく耳にしますが、これは『一生払い続ける』終身タイプを指しています。
加入を検討するなら、その保障が本当に必要か、この先に支払い続ける保険料がいくらになるか、費用対効果を吟味してほしい」
不安に駆られ冷静さを失うと「保険会社の思うツボ」になりかねない。
正しい知識を身につけて、がん保険の加入是非を検討したい。
※週刊ポスト2024年4月26日号