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【日銀のマイナス金利解除で起きること】庶民生活に当面大きな影響はない、民間銀行は巨額の利益、ゾンビ企業は淘汰へ

日銀のマイナス金利解除が企業や私たちの生活にどんな影響を与えるのか

日銀のマイナス金利解除が企業や私たちの生活にどんな影響を与えるのか

 ついに超低金利時代が終わろうとしている──。

3月19日に日銀の金融政策決定会合で「マイナス金利」の解除が決定した。

 

これまでは、民間銀行が日銀にお金を預ける際の金利をマイナス0.1%にすることで貸し出しを促し、企業が銀行からの資金調達をしやすくして景気向上を狙う施策が取られていた。

 

 だがこれが解除されたことで、約17年間続いた超低金利時代が終わりを迎えることになる。これによって今後金利は上昇する見込みだが、私たちの生活にはいったいどのような影響が出るのか。

 

 ファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんは「金融政策の変更としては微々たるもので、市民生活に大きな直接的影響はない」と予測する。

 

「利益を得られるのは民間銀行だけ。これまで日銀に預けていた当座預金のマイナス金利がなくなることで、業界全体で2500億円ほどプラスになるといわれています。

 

 しかし、それを受けてメガバンク普通預金金利をこれまでの20倍に引き上げたところで、せいぜい0.02%になっただけ。これでは銀行預金で大きくお金を増やせるわけもありません」(松岡さん・以下同)

 

 多くの人が心配している住宅ローンの変動金利も、当面は上がらない見込みだと松岡さんは続ける。

 

「少なくとも、今年いっぱいは影響はなさそうです。追加の利上げがあるとしても、今年と来年で合計1~2回程度で、利上げ幅は小刻みなはず。しばらくは固定金利よりも変動金利の方が有利です。

 

 ただし“いざというとき”に備えて、いまのうちから貯蓄をしておいたり、繰り上げ返済を進めておく方が安全ではあります。

 

 そもそも住宅ローンは、家計が黒字のときこそ、繰り上げ返済用に貯めておくのが正解。金利上昇の可能性が高まっているいまこそ、計画的に返済しましょう」

 

 いま余裕があるからといって、現預金がギリギリになるほど資産運用に回していると、万が一住宅ローン金利が上がったときに“ローン貧乏”になる可能性もゼロではないのだ。

 

 

「金利上昇」が企業や私たちの生活に与える影響

金利上昇」が企業や私たちの生活に与える影響

利上げでゾンビ企業の淘汰が始まる

 一般庶民が「貧乏なまま」の生活を強いられる一方で、銀行からの融資を受けて生き延びてきた企業の多くは倒産の憂き目に遭うことが予想される。経済評論家の加谷珪一さんはこう語る。

 

「融資の金利は今後確実に上がります。いままでの低金利ですら経営が苦しかった企業にとって、金利上昇は業績の悪化に直結する。

 

この先銀行から借り入れができず、利払い負担が増えることで“淘汰”されていく企業が増えるでしょう」(加谷さん・以下同)

 

 実は、銀行からの借り入れが多すぎて、利子の支払いだけで手一杯の“ゾンビ企業”が、国内企業の2割を占めるともいわれている。大企業を中心に「過去最高益」などと喧伝されているが、本当に利益を上げているのはほんの一握りの優良企業だけなのだ。

 

「日本企業の利益が増えたといっても、そのほとんどは人件費や外注費を削ったコストカットによるもの。本当に価値のあるものをそれに見合った値段で売ることで得た利益ではないので、賃上げなどできるはずもないのです。

 

 賃上げができるような利益を上げているのは、ユニクロを展開するファーストリテイリングニトリアイリスオーヤマなど、消費者が“値上がりしても買いたい”と思えるような価値を提供している企業だけ。今回の賃上げは、いい会社とそうでない会社の差を浮き彫りにしたとも言えます。

 

 政府は表立って口にはしませんが、賃上げができないような“ダメな企業”が淘汰され、よい企業だけが生き残る新陳代謝が起きることを期待しているのではないでしょうか」

 

 だが“ゾンビ企業”や、賃上げができないダメな企業がふるいにかけられれば、多くの失業者が出る。新陳代謝の結果、日本がもっと貧しくなってしまっては元も子もない。ところが加谷さんは「それこそが健全な流れ」だと指摘する。

 

「失業者が出たら、政府が手厚く支援すればいいだけの話。その結果強い企業だけが残れば賃金は上がり、ひいてはそれが日本全体の成長につながるはずです」

 

 そうした視点や失業者をケアするための方策を政府が持ち合わせていないという悲劇こそが、私たちが貧しさのループから抜け出せない一因だろう。

 

 

※女性セブン2024年4月18日号