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【超高層マンションが灼熱地獄に】温暖化の影響で住宅の“南向き信仰”に変化 真夏はエアコンフル稼働でも涼しくならず、北向きマンションに買い替える人も

温暖化が進む昨今、マンション選びの“常識”にも変化が(写真:イメージマート)

温暖化が進む昨今、マンション選びの“常識”にも変化が(写真:イメージマート)

 地球温暖化が進み、異常気象が常態化しつつある。

日本には豊かな四季があり、季節の移ろいを感じられたが、昨今は春や秋が極端に短く、暑すぎる夏と温暖化した冬が数か月続く「二季化」現象が起こっている。

その「二季化」は、住宅選びにどんな影響を及ぼすのか。

 

 日本人は昔から南向きの部屋を好んできた。高温多湿という日本特有の気候もあり、風通しや日当たりのいい南向きの家やマンションが多く造られ、実際に価格や不動産評価が高いのは南向きの物件だ。

 

 ところが、住宅評論家の櫻井幸雄さんによると、近年は温暖化の影響で、この“南向き信仰”が崩れ始めているという。

 

「特に顕著なのが、南向きの超高層マンションです。この場合、両隣が別の住戸だとすると、一面しか窓を設けることができないため、南向きに大きな窓を設置する傾向が強い。

 

しかも、高層階だと前を遮る建物や樹木がなく、大きな窓から大量の太陽熱が入ってくるので、一般のマンションや一戸建てに比べてより暑くなってしまう。真夏ともなると、まさに灼熱地獄で、とても住んでいられないというのです」(櫻井さん・以下同)

 

 

熱は、夏の場合73%が窓から流入。窓の断熱性能を高めることで、冷房機器の効率もよくなり節電にも一役

熱は、夏の場合73%が窓から流入。窓の断熱性能を高めることで、冷房機器の効率もよくなり節電にも一役

エアコンフル稼働でも涼しくならない

 こうした状況は10年ぐらい前からあったというが、真夏の最高気温が40℃を超えるようになったここ数年で、灼熱の度合いがますます高まっている。

 

「南向きの超高層マンションの住人に話を聞くと、猛暑の夏は早朝からリビングの室温は30℃超え。エアコンをフル稼働させても涼しくならず。

 

 いまは遮光断熱タイプのカーテンがあるので、それを閉めれば日光を遮るものの、ちょっとした隙間から光が入ってくるので、ガムテープで目張りまで行う。そうなると部屋の中は昼間でも真っ暗。それでも熱が入ってくるよりはましという深刻な状態です」

 

 その結果、超高層マンションで南向きの暑さを経験した人は、次の買い替えでは北向きの部屋を選ぶ傾向が出てきているという。

 

「北向きは暗いイメージがありますが、最近は窓も大きくそれほど暗くはありません。明るさを求めるなら、午前中に日差しがある東向きもおすすめです」

 

これからの主流、ZEH(ゼッチ)とは

これからの主流、ZEH(ゼッチ)とは

急速に増えているZEH住宅

 いま、「ZEH(ゼッチ)」と呼ばれる建物が注目を集めている。

ZEHは「Net Zero Energ House」の略で、高断熱・省エネ・創エネで年間エネルギー消費量を実質ゼロにする住宅。

 

高気密・高断熱に加え、第1種換気(強制給気・強制排気を行う換気方式。

導入コストや電気代がかかるが、熱交換換気システムによって室温が外気の影響を受けないメリットがある)など24時間換気を備えるのも特徴。

 

一戸建てのほか、マンションでも普及が進んでいる。

 建物を高断熱化して、太陽光発電などを使うことでエネルギー収支ゼロを目指すというものだ。

「CO2を削減することもでき、新築の建物には一戸建てもマンションもZEHが急速に増えています」

 

庭作りも土の部分を減らして雑草を生やさない工夫が求められる

 温暖化は家の庭作りにも影響を及ぼしている。

「ここ数年、一戸建てに住んでいる人から庭の雑草の伸び方が尋常じゃないという話をよく聞きます。

 

もともと温暖な沖縄では、樹木の発育がよすぎてジャングル化しやすいため、庭の植木を少なくするという発想があります。それが、本州でも同じような状況になりつつあるのではないでしょうか」

 

 これからの庭は、土の部分を減らして雑草を生やさない工夫が必要だという。

「ウッドデッキでテラスのような庭にしたり、レンガを敷き詰めたり。

 

また、1階の庭は駐車場として使い、2階のベランダやバルコニーに鉢植えやコンテナを置いて小さな庭を楽しむ。そんな暮らし方が好まれるようになってきています」

 

 

【プロフィール】
住宅評論家・櫻井幸雄さん/年間200軒以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通する住宅評論の第一人者。テレビやラジオ出演のほか、著書も多数。

取材・文/北武司 イラスト・作図/勝山英幸

※女性セブン2024年4月11日号