道草の記録

株主優待・ふるさと納税の返礼品・時々パチンコ

「もうフルタイム勤務は無理かも…」共働き家庭を待ち受ける“小1の壁” 30代女性が学童利用で実感した負担の大きさ

保護者がそれまでの働き方を変えるケースも(イメージ)

保護者がそれまでの働き方を変えるケースも(イメージ)

 

子供の小学校入学を機に仕事と育児の両立が難しくなる「小1の壁」に直面する家庭は多い。共働きなどで保護者が日中に不在の場合、小学校入学後は放課後児童クラブ(学童保育)を利用できるが、保育時間の制限や長期休み中の対応など、様々な面で保育園などの幼児保育とは異なる条件がある。

 

出勤時間が学校の始業前の場合、預け先がなかったり、残業で迎え時間に間に合わなかったりして、子供の小学校入学後にフルタイム勤務を諦める人もいるという。

 

具体的にはどんな困難があるのか。実際に「小1の壁」に突き当たったという30代女性に、フリーライターの吉田みく氏が聞いた。

 * * *
 新年度が始まり、小学校入学を迎えた家庭で話題に上がるのは学童保育ではないだろうか。

共働き世帯が増えてきている中で学童保育は強い味方となっている。

しかしその一方で退所者も少なからずいるという。

 学童保育の運営などを手掛ける特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」が小学校低学年の子供を持つ家庭(男女360人)を対象に調査したところ、学童利用中が40%、未利用が44.4%だった。

 

入所後に「やめた」との答えは15.6%あり、そのうち約半数が1年生のうちに退所していた(2024年2月調査)。

 1年生での退所理由としては「子供が行きたがらなくなった」が最多だが(35.7%)、「働き方を変えたから」との回答も28.6%に上った。

 

この調査結果からも、学童保育の入所当初と入所後で、働き方を変えたほうがよいと感じる保護者が一定数いることが窺える。

 千葉県在住の会社員・クミさん(仮名、35歳)も、子供の小学校入学を機に働き方の変更を検討している一人だ。

「入学前の学童の説明会で『お子さんが環境に慣れるまでは早めにお迎えに来てほしい』『長期休みの学童保育はお弁当を持たせて』『勤務時間と出勤日は毎月提出し、正確に教えてほしい』などと言われ、その時点でパンク寸前です……」(クミさん、以下同)

 

学童保育の月額利用料は「1万円未満」が8割以上(こども家庭庁がまとめた令和5年調査より)

学童保育の月額利用料は「1万円未満」が8割以上(こども家庭庁がまとめた令和5年調査より)

 

 クミさんは産休育休を経て、0歳から子供を保育園に預けてフルタイムで働いてきた。

通っていた保育園では給食が出たり、残業時の延長保育に柔軟に対応してくれるなど、働く親の負担が軽減されるような配慮が多く、入園前に不安になることはなかったという。

そういった背景もあり、学童保育からの“お願い”が負担に感じられたそうだ。

 

 会社までは片道40分かかり、残業も多いため、早めの迎えは難しいという。

長期休み中の弁当作りができないわけではないが、その分早く起きなくてはいけないなど、クミさんの日常にとってハードルが高く感じられたそうだ。

 

「持参するお弁当をコンビニで調達してもいいか確認すると、『子供がかわいそうなのでイレギュラーな場合のみにしてほしいです』と言われました。

 

早めのお迎えも難しいと伝えると、『ご両親やご近所の方に頼ることはできませんか?』と言われましたが、親も仕事をしていて頼ることはできないし、『ご近所さんに頼って』と簡単に言いますが、そんな気軽なものではありません」

送迎付きの民間学童を検討したが…

 夫婦で話し合った結果、新学期が始まって1か月間はクミさんが有給休暇を使い対応することを決めたそうだ。

 

しかしこれで有休はほぼなくなってしまい、病気など万が一のための休暇に充てることが難しくなってしまった。他にも、キャリアアップに影響するのではないかと不安を感じているようだった。

 

 学童についての悩みを同じ部署で働く先輩ママや学生時代の友人に相談すると、色々な方法があることを知ったという。

 

「最近増えている民間の学童保育の利用や、習い事で時間を埋めるなどの具体策の提案だけでなく、学童によって方針が様々なので情報収集をしっかりとすべきだったことも指摘もされました。学校の近くにある学童に入れることしか考えなかったのは甘かったかもしれません」

 

 

 知り合いからの提案もあり、送迎付きの民間の学童保育を検討し始めたクミさんだったが、利用金額に衝撃を受けたと話していた。

 

「学童に預けながら習い事もできる魅力的な民間学童なのですが、週5日の利用で料金は月6万円を超えます。こんな高額な費用を払ったら、何のために仕事をしているのかわからなくなってしまう。驚いたのが、利用者が多く、間もなく定員になってしまうんだとか。

 

我が家にはその余裕がないので利用できません。子供を育てながら働くことのハードルの高さをさらに感じています」

 

 当初、子供が一人で留守番できるようになるまでは学童保育を利用したいと考えていたものの、いざ始まってみるとクミさんにとっては負担に感じる部分が多く、今後も利用するか悩んでいるようだった。現在のフルタイム勤務を見直し、学童保育を利用せずに働くことも検討中だそうだ。

 

 親が働くためのサポートとなる学童保育だが、人によっては仕事と学童利用の両立が難しいケースもある。ライフスタイルに合わせて両立させるには、積極的に情報を得ていく必要があるかもしれない。

 

 

【プロフィール】
吉田みく(よしだ・みく)/埼玉県生まれ。大学では貧困や福祉などの社会問題を学び、現在はフリーライターとして人間関係に独自の視点で切り込んでいる。マネーポストWEBにてコラム「誰にだって言い分があります」を連載中。同連載をまとめた著書『誰にだって言い分があります』(小学館新書)が発売中。