大阪市内がタワーマンション(タワマン)の建設ラッシュに沸いている。タワマンとは一般的に20階建て以上の超高層の大型マンションを指すが、「梅田、淀屋橋、本町、心斎橋、難波、天王寺といった地下鉄『御堂筋線』の沿線で多く建てられ、市内には250棟も乱立している」(全国紙経済部記者)という。
東京でも高級タワマンは人気だが、大阪には少し違った事情もあるようだ。
大阪のタワマン専門の新築・中古の仲介業者が語る。
「好調かと聞かれると、絶好調ですね。売れ行きもよく、値段も上がっている。
来年は大阪万博も開催されますし、(海外顧客の需要にマイナスとなる)円高に大きく振れない限り、まだまだ好調は続くと思われます。
特に昨年、大阪駅北側の再開発『うめきた第2期工事』として建設中のタワマン『グラングリーン大阪 ザ ノース レジデンス』の最上階(46階)の分譲価格が、関西では史上最高の25億円と発表されたことが大きかった。
発表後は、中津、北浜、中之島といった梅田周辺にあるタワマンの中古物件が一気に値を上げました」
東京から比べて3割以上安かった
東京の不動産市場も活況だが、もともと東京と大阪のタワマン事情には、似ている点と異なる点があったようだ。
タワマンを中心とした中古物件を扱う別の不動産業者はこう話す。
「もはや、新築の分譲時よりも、その後に何年かして中古市場に出した時のほうが高い値段がつくのは当たり前。まるで美術品のような値段の動き方だから、不動産を投資用として購入し、短期間住むか、賃貸に出してから転売する人が多くなっている。
これは東京も大阪も同じです。
ただ、東京に比べて大阪のタワマン物件は3割以上安かった。東京では軒並み1億円超えだが、大阪では6000万~7000万円で購入できる。
もちろん購入者の大半は医師や会社役員といった富裕層ですが、少し割安の大阪では都会生活に憧れる若い世代の需要も多い。
上層階で50平米以下の手頃な物件も少なくないため、半分近くは30代、40代のサラリーマンが住んでいる印象です。
大阪全体のタワマンでいえば、投資目的の購入者は3割程度。
東京の企業関係者が大阪の拠点として購入する例も少なくない。
投資目的も含んでいますが、東京に比べて割安感があるために、実用性を求めて購入する人も多いのがこれまでの特徴だったと思います」
2020年頃から海外の投資家が急増
ただ、そうした状況に近年は少しずつ変化がみられるのだという。大阪の再開発の象徴である大阪駅北側の「うめきた」先行開発が終わった2013年頃から中国人を中心とした海外の投資家が増え始め、第二期工事が始まった2020年頃からは急増してきたというのだ。前出の不動産業者が続ける。
「円安効果もあるが、大阪のタワマンが東京に比べて安いために、東京からシフトしてきた中国人投資家が少なくない。東京で手が出なくなった日本人投資家が大阪で買うというパターンもあります。
海外、特に中国の投資家はすべて現金で買っていく。
中国人は登記だけして賃貸物件として活用していることが多く、賃貸で稼いで2~3年で転売していきます」
旧梅田貨物駅だった24ヘクタールの再開発が始まったのは2002年。
「グランフロント大阪」と呼ばれる先行開発区と「グラングリーン大阪」の第二期工事区に分けられる。
先行開発区は商業施設&オフィス2棟、商業施設&ホテル1棟、住宅1棟の計4棟のタワーが2013年に完成。
住宅の1棟は「グランフロント大阪オーナーズタワー」で、地下1階地上48階建、総戸数525戸となっている。
大阪駅から商業ビルのなかを通って帰ることができる高級タワマンとして売り出された。
現在、中古物件として30階台の2LDK(約95平米)が約2億5000万円、20階台の1LDK(約80平米)が約2億2000万円などで売りに出される。
賃貸だと40階台の2LDK(約90平米)が月70万円、10階台の3LDK(約100平米)が月60万円といった募集が出ている。
築10年以上の物件としては高額に思えるかもしれないが、新築物件はそれ以上に高騰している現実がある。