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「サプリメント」は“薬のように健康効果があるもの”ではない 科学的根拠を欠く“個人の体験談”が横行

「降圧剤選び」のポイントは?(写真/AFLO)

サプリメントのうたい文句に注意を(写真/AFLO)

 

「睡眠の質を高める」「記憶力対策に」「血圧が高めのかたに」「体に脂肪がつきにくい」……印象的なうたい文句のサプリメントはいまやドラッグストアだけでなく、スーパーやコンビニでも手軽に買えるようになった。

だがこれらはあくまでも「食品」であり、“薬のように健康効果があるもの”では決してない。

 

東京大学非常勤講師の左巻健男さんが説明する。

「サプリには『特定保健用食品(トクホ)』『機能性表示食品』などがありますが、いずれも医薬品ではなく『食品』。医薬品は効果と安全性を厳しく試験する必要があります。

 

 トクホを名乗るには臨床試験が必要ですが、中には被験者の数が少なかったり追跡が甘かったりと、根拠が怪しいものもある。さらにひどいのは機能性表示食品で、ガイドラインこそありますが、効果と安全性について誰も審査しません。

根拠はメーカーの自己申告のみで、資料を提出し、書類に不備がなければ販売が可能になります」

 

 その証拠に、サプリには「血圧が高めのかたに(おすすめです)」などと書かれてはいても「血圧を下げます」といった明確な効果・効能は絶対に書かれない。

どれも効果がありそうなイメージを与え、消費者に都合よく解釈させているだけなのだ。

 

東海大学医学部非常勤講師で形成外科医の北條元治さんも口を揃える。

「言ってみれば、食物繊維が添加された機能性表示食品は、食物繊維が豊富なレタスと同じ。

特別に便通を整える効果はありません。

だとすれば、レタスから自然の食物繊維を摂った方が安心安全です」

 

 特別な効果が見込めないのは「肌がきれいになる」「かぜを治す」などといわれているビタミンCも同様だ。肌や粘膜の合成にかかわっているのは事実だが「不足すると肌の調子や体調が悪くなる」というだけで、「たくさん摂るほど状態がよくなる」わけではない。

 

「複数の論文で、ビタミンCを多く摂っても、かぜをひく確率は下がらないし、さらにはがんの予防にもならないことがわかっています。

 

喫煙者など、日頃からビタミンCが不足しがちな人がサプリで補うのはかまいませんが、普通に食事をとっている人がサプリでビタミンCの摂取量を増やしても、毒にも薬にもなりません」(左巻さん・以下同)

 

 凝縮され、より効果の高められた有効成分をイメージさせる「レモン○個分のビタミンC」「しじみ○個分のオルニチン」などといううたい文句も、うのみにしてはいけない。

 

「これはあくまでも含有量のこと。

サプリに含まれるのは、実際にレモンやしじみから摂られた栄養素ではなく、合成したビタミンやアミノ酸であり、本物のレモンやしじみを摂取するのと同じ効果や安全性があるかはわからない。

 

 そもそも、口から入った成分はすべて胃で消化されるため、グルコサミンやコンドロイチンも、口から摂っても胃や腸で分解されて、ひざ関節といった“効いてほしい部分”には届きません」

 

サプリメントのウソ常識

サプリメントのウソ常識

 

 目にいいとされるアントシアニンも、効果を示す科学的根拠はほとんどない。

女性に多い貧血も、サプリで対処しようとする人も少なくないが、鉄分サプリなどではなく、病院を頼るべきだ。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが言う。

 

「貧血なら鉄分サプリなどはのまずに病院に行くべきです。

サプリよりも安い値段で、効果のある薬を処方してもらえます」(長澤さん)

 

 近年、のむと長時間体内にとどまることをうたった「タイムリリース型」や、分子が小さくより高濃度で吸収されるという「リポソーム型」と呼ばれるサプリがSNSなどで若い世代を中心に注目を集めているが、これらも効果のほどは定かではない。

 

SNSや動画サイトの健康情報は多くが科学的根拠に欠ける“個人の体験談”です。場合によっては、体験談に見せかけた広告のことも少なくありません。

 

どうしてもサプリなどの健康食品を摂りたい場合は、管理栄養士などの専門家に相談するか、厚労省などの公的なホームページで情報収集してほしい」(北條さん)

 

 そもそも、SNSやCMなどで目にする著名人や個人の体験談は、多くが「プラセボ(思い込み)」によるものだと、左巻さんは斬って捨てる。

 

「一時期“よく眠れてストレスが軽減した”といった著名人の体験談から乳酸菌飲料が爆発的にヒットしましたが、商品自体の効果ははっきりとは証明されておらず、快眠効果は強いプラセボによるものだと考えられます」(左巻さん・以下同)

 

 効果がないならまだしも、サプリによって健康を害するケースすらある。

「米国では、高い抗酸化作用のあるβカロテンによって肺がんを防げるのではないかという仮説のもと、喫煙者(肺がんリスクのある人)を2つのグループに分けて、それぞれに偽薬とβカロテンのサプリを与える大規模な実験が行われました。

 

すると、なんとβカロテンをのんだグループの方が、明らかに肺がんになる人や死者が多くなったのです。そのため、実験は途中で中止になりました。

 

 サプリは特定の栄養素のみを簡単に大量摂取できる点にも危険がある。水溶性のビタミンCは摂りすぎても尿として排出されるだけですが、中には大量に摂ると代謝しきれずに体にたまってしまうものもある。

 

サプリを分解するのは肝臓なので、のみすぎれば肝臓を酷使することになり、肝機能障害につながる可能性もゼロではありません」

 

 

いますぐアップデートしたい薬のウソ常識

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 コロナ禍に「免疫力を上げる」と注目されたビタミンDも、摂りすぎてはいけない。

 

ビタミンDサプリで免疫力が向上するかどうかは定かではありませんし、カルシウムの吸収を促す作用により、摂りすぎると高カルシウム血症になることがある。

腎臓結石や尿路結石のリスクも上がります」(長澤さん)

 

 クロレラも、過剰摂取で光過敏症になることがあるとわかっている。中には、サプリそのものが健康問題につながるケースもある。

 

「肝機能を助けるという触れ込みのはずなのに、うこんは肝機能障害などの副作用が多く報告されています。一時期がん予防になるともてはやされたアガリクスのとあるサプリにがんの促進作用があることがわかり、問題になった事例もありました」(左巻さん)

 

サプリメント」とは直訳で「補う」という意味。食事が不規則で栄養バランスが偏りがちな人が足りない栄養素のサプリをのむのは問題ないと、長澤さんは言う。

 

「乳酸菌やマルチビタミンなど、特に不足しやすい栄養素を、用法用量を守ってのむなら大丈夫です。ただし、病気の症状が改善したり、ダイエットできたり、さらに健康になることはありません」(長澤さん)

 

 大量の情報が飛び交い、薬も、サプリも、ネットで簡単に購入できる時代になった。だからこそ、正しい情報を取捨選択できなければ、その無知が健康を損なうのだ。

 

 

※女性セブン2023年11月16日号

 

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