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《豪雨による地下街の浸水リスク》丸の内、有楽町、大手町など駅直結の巨大地下施設は全体が水没する恐れも 海抜が低い大阪、海に近い名古屋の地下街もリスクあり

豪雨時は地下鉄や地下街で浸水被害も(2003年福岡県の地下鉄「博多駅」/共同通信社)

豪雨時は地下鉄や地下街で浸水被害も(2003年福岡県の地下鉄「博多駅」/共同通信社

 

 秋が深まるこれからの季節、台風シーズンの本格化で豪雨のリスクが増すことが予想される。

そうした状況で懸念されるのが、昨今のゲリラ豪雨によって浮き彫りになった災害時における「地下」の危険性だ。

 

実際にそうなると地下では何が起こるのか。東京を例にし、シミュレーションしてみよう。

 そもそも東京は傾斜や地盤沈下の影響で地面が低く、「下町」と呼ばれる東側の低地を中心に地形的な脆弱性を抱え、江東区墨田区江戸川区葛飾区、足立区には海抜ゼロメートル地帯がある。多くの識者が想定するのは、下町エリアを流れる荒川の氾濫だ。

 

 東京都交通局は、荒川右岸21kmが破堤するシミュレーションを2023年に公表した。

それによると、地上の浸水域は大手町、丸の内、有楽町といった都心部に達する一方、地下に流入した水は地下鉄ネットワークを通じて地上の浸水範囲よりも広範囲に広がり、都営地下鉄のトンネル内浸水延長は約43kmに及ぶ。

さらに、豪雨の危険が迫るのは、駅構内にとどまらない。

 

「丸の内や有楽町、大手町など、駅に直結した地下街も危ない」

 そう語るのは元都庁の土木専門家で、公益財団法人リバーフロント研究所審議役の土屋信行さんだ。

 

「それらのオフィス街では地下鉄とその出入り口が一体化し、食堂街や物販店などあらゆる地下施設がワンステージでつながっています。豪雨が発生したら共通の出入り口から水がどんどん入り込み、地下施設全体が水没する恐れがあります」(土屋さん)

 特に都心の広大な地下街は管理面に不安があると防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんが続ける

 

「新宿や東京、大手町、有楽町などは多くの路線が乗り入れ、広大な地下街が広がります。そうした複雑に入り組んだエリアは浸水リスクに加えて、管理区分が複雑に分かれていて非常時の対応が難しい。

災害時の協力協定は結んでいるものの、管理区分のうち1か所でも対応を誤ればそこから被害が拡大してしまう」

 

 

 

荒川破堤で浸水どうなる?豪雨で都営地下鉄の全長43kmが浸水の懸念も

荒川破堤で浸水どうなる?豪雨で都営地下鉄の全長43kmが浸水の懸念も

 

恐ろしいのは、“Xデー”が到来したら迷っている時間はまったくないということ。ある実験では地下室で水位が上がる速度を調べると、高さ3mの天井まで達するのに十数分しか要しなかったとされる。

 

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんが説明する。

「地下の狭い空間に閉じ込められると、浸水によって溺死する可能性があります。実際、過去の災害で溺死が発生した場所はビルなどにある狭い地下室が多かったです」

形のない水の侵入を食い止める困難さ

 東京以外の大都市にも豪雨リスクは当然ある。

「大阪は海抜が低く、川と海に囲まれているうえ、古くて複雑な地下街にもかかわらず水害対策が進んでいない場所が多いので、大規模な人的被害が生じる確率が高く非常に心配です。

 

 海が近い名古屋や、何度も浸水被害が発生した福岡の地下鉄や地下街にも水没リスクがあります」(和田さん)

もちろん、自治体や鉄道会社などは被害を見越して豪雨対策を進めているが、形のない水の侵入を食い止めるのは容易ではない。元東京メトロ社員で鉄道ライターの枝久保達也さんが語る。

 

「水は小さな隙間からでも入ってくるので、完全に防ぐのは難しい。

 

 8月のゲリラ豪雨では市ケ谷駅の地上にある出入り口に、駅員が水の侵入を防ぐ止水板を設置しようとしたが格納庫が水圧で開かず、ならばとシャッターを下ろしたものの水圧で破損して浸水しました。これらの作業は利用客が板やシャッターに挟まれないよう目視で確認して行う必要があり、緊急時には間に合わないケースが多いのです」

 

 大切なのは事前に豪雨リスクを把握しておくこと。平時から自宅や職場、学校などの最寄り駅周辺の地形を確認しておきたい。ウェザーマップ代表取締役社長で気象予報士の森朗さんが語る。

 

「普通に暮らしていると土地の高低がわかりにくいのでハザードマップで確認しましょう。

実際に自転車で走ってみると、上る際に負荷がかかるので、地形を体感できます」

 

 

※女性セブン2024年10月10日号