昨今、パチンコ・パチスロ業界でよく聞くのが「来店バブル」という言葉である。有名なパチンコ・パチスロライターやYouTuberなどの“演者”が、パチンコホールに来店するイベントが増えているのだ。
来店イベントが増えるきっかけとなったのが、昨年2月にパチンコホール関連4団体(全日遊連、日遊協、MIRAI、余暇進)が発出した「広告宣伝ガイドライン(第2版)」。これによって、ホールによる来店イベントの宣伝・告知が認められた。どういうことか、パチンコ業界に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が説明する。
「パチンコホールでは、集客のために射幸性を煽るような形でイベント開催を告知することは認められていないという大前提があるのですが、それとは別に各都道府県によってイベント告知のルールが異なるという問題がありました。
つまり以前は、来店イベントについて、告知できる地域とできない地域があったのです。
そういった状況の中で昨年、全国共通のルールとなるガイドラインが発出され、全国的に来店イベントの告知が可能になった。もちろん、射幸性を煽るような表現はNGではあるものの、来店イベントの告知が全国的に認められたことで、イベント開催数が急増しているということです」
来店イベントにはいくつか種類がある。オーソドックスなものは、有名ライターやYouTuberがホールを訪れ、一般客と同じように遊技するというもの。サイン会や写真撮影などのファン対応の時間が設けられることもある。
また、ホールでYouTubeなどの収録を行い、それ自体をイベントとして活用することも多い。登録者数の多い人気チャンネルの番組収録であれば、数百人から千人以上の集客が見込めることもあるという。
「なかにはAIで生成された美女のキャラクターが来店するという体裁で、実際には誰も来店しないイベントを告知していたケースもありました。“AI来店”などと呼ばれていましたが、実態がないため、これはガイドラインに抵触するという認識です。
また、パチンコ・パチスロ専門メディアがホールの状況を取材する日程を告知し、それが事実上のイベントとなっていることもあります」(藤井氏、以下「」内同)
ビジュアルのいい女性演者のSNSは特に拡散力が高い
現在の「来店バブル」においては、来店する演者に支払われるギャランティーの高騰が囁かれることも多い。一説では1回の来店で100万円を超えるような演者もいると囁かれるが、実際にはどうなのか。
「来店イベントのギャラの相場としては、5万~10万円がベースで、人気のある演者なら20万~30万円のケースもあるのでは。ただ、単純な来店イベントだけで100万円を超えるギャラが発生することはほとんどないでしょう。少なくとも“演者1人に100万円”というのは考えにくい。
たとえば“超人気YouTubeチャンネルの番組制作費込みで100万円”というようなことならあるかもしれませんが」
また、若い女性演者の来店イベントが特に増えている。
「ホールが宣伝効果を期待しているのが、演者自身のSNSです。パチンコ・パチスロユーザーは男性が多いということもありますし、若くてビジュアルのいい女性演者のSNSは特に拡散力が高いのも事実です」
常連客が損をするいうジレンマも
来店イベントは、ホールにとっては集客のために開催するものだが、ユーザーが来店イベントにもっとも期待しているのは、出玉での還元だ。
「集客力の高いイベントであれば出玉で還元する可能性が高い一方で、そのイベントだけを狙って遠方からホールにくるユーザーも多い。そうなると、常連客に還元できなくなるという問題が発生します。
また、“軍団”と呼ばれるプロ集団が押し寄せ、彼らばかりがおいしい思いをするということもある。ホールとしては、もちろんイベントで盛り上げることも重要ですが、本来であれば常連客を大切にして、地道に営業を続けていくことも考えなければならない。
集客のためにイベントを開催するのに、結果的に常連客が損をするというジレンマがあるのもたしかです」
今後も来店バブルは続くのだろうか。
「すでにバブルは落ち着き始めているという声も聞こえてきます。
というのも、イベントを開催するのはいいけど、ただ開催しているだけで出玉での還元がなされないというケースもあるわけです。
ユーザーも旨味があるかどうかを嗅ぎ分けられるようになり、メリットが少ないイベントは淘汰されていくでしょう」
バブルとはいつか弾けるもの。近い将来、パチンコホールの来店バブルも落ち着き、本当にユーザーが行きたいと思うようなイベントだけが残っていくのかもしれない。