今年の年末年始は最大9連休となることから、実家でのんびり過ごすという人も多いだろうが、なかには帰省をしたくないという人もいる。
これまで、そうした「帰省したくない」人たちの理由は、「親から結婚や出産の意向を探られる」「親戚付き合いが面倒」など、結婚に関する世代間価値観のギャップや血縁関係の煩わしさが多く取りざたされてきたが、実家に帰りたくない理由はそれだけではない。
帰省に気が乗らない人たちに話を聞いてみた。
とにかく愚痴しか言わない母親にうんざり
妻と子供2人、4人家族のAさん(東京都/40代男性)の実家は静岡県。
東京からはそう遠くない距離だが、帰省しない理由は、親子関係にある。「仲が悪いわけではない」と前置きをするものの、それでも帰らないのは「母の性格が厄介」だという。
「母が何にでも愚痴を言う気質なんです。私は慣れているとはいえ、いちいちネガティブなことばかり聞かされていると、腹が立ってケンカになるのは毎度のこと。
ネガティブなこととは、たとえば、テレビを見ながら『おもしろくない』『こんな人がなんで出ているのか』、食事をしていても『少ししょっぱい』『おいしくない』と。
『じゃあテレビを消せば』とでも言おうものなら、『偉そうに指示をするな』みたいな反撃がくるんですよ。
一緒に出掛けても絶対に愚痴を言うことがわかっている。
そんな人に積極的に会いたいと思わないじゃないですか……」(Aさん)
Aさん以外にも、「両親との仲が悪いから家を出たのに、わざわざ帰る理由がない」(東京都/20代女性)、「父親が無職。金の無心をしてくるから近寄りたくない」(神奈川県/30代男性)など、家の居心地の悪さを指摘する声は複数聞かれた。
「Wi-Fiがない」「部屋は物置」…実家に居場所がない
Bさん(神奈川県/独身/30代)の実家は岡山県。「実家に帰ると虚無になる」という。どういうことか。
「大学で家を出たので、帰っても自分のものは何一つないどころか、居場所もない。
しかも実家があるのは田舎で、遊びに出かけるとしても、イオンまで車で40分。
コンビニもないし、出かける場所が単純にありません。
普段テレビを見ないので、実家でテレビをつけても知らない人ばかり。
しかも実家にはWi-Fiが無く、ネトフリやアマプラで時間を潰すこともできない。
本当になにもすることがないんです。
一昨年帰省した時は暇すぎて庭の木に何度も水やりをしていました」
Bさんのように、「実家で何もすることがない」という人は少なくない。福岡県に実家があるCさん(神奈川県/30代)は、「自分の部屋は荷物置きになっていて、私のものも居場所もない。
夏に帰った時は玄関の脇の部屋で寝かされました。結果、帰っても居心地が悪い」と言う。
Cさん(東京都/既婚/30代男性)が帰らない理由は、「実家が寒い」ことにある。
「実家は神奈川県の一軒家で、帰ろうと思えばすぐに帰ることはできるんですが、あまりにも実家が寒いんです。
暖房器具といえば石油ストーブがありますが、両親はかたくなに暖房をつけようとせず、石油ストーブもケチケチ使う。
両親は家のなかでダウンジャケットを着ていますし、私も帰ったら風邪をひいたりします。
『帰ってきてほしいと思うんだったら、帰りたくなるような家にしてほしい』と言ったこともありますよ」
雪かき要員として働かされたあげく近所トラブルまで
Cさんのケースはまだかわいいかもしれない。
Dさん(東京都/独身/30代男性)の実家は秋田県。「とにかく雪が問題」だと話す。
「実家は秋田の内陸にあり、豪雪地帯です。雪かき問題があり、実家だと朝早くから雪かき要員として起こされ、数時間に一度外で働くことになります。
もちろん、高齢の親が雪かきをするよりは自分が頑張りたいという思いはあるのですが、近所中が高齢者。
帰ったら『若いんだから』と言われて、実家どころか近隣の雪かきを朝から晩までやらされます」
そんなDさんは、「近所の雪かきでトラブルになったことがある」と明かす。
「隣の家から、うちの雪かきもやってと言われてやったら、さらにその隣の家から、『なぜうちもやらないんだ』みたいに言われて……。
疲れていたので何も言い返せなかったのですが、僕が意地悪扱いされて、僕の親のところにクレームが入ったことがありました。
そういうこともあって面倒になり、数年前から、年末年始の帰省は避けるようになりました。
帰らなかったら帰らなかったで、近所から『冷たい息子だね』と言われるそうなんですけど、逆に、その『冷たい息子』ブランドの認知を広めようと思ってます。
両親には悪いですが、雪国の問題は難しいですよね」(Dさん)
実家に帰ることを躊躇する人たちは、想像以上に多いのかもしれない。