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このままでは日本が破綻する可能性も…ここにきて「自動車税」が危ない状況に陥っている「本当の理由」

いま「百年に一度の変革期」を迎える自動車界において、2024年末~2025年にかけて、日本の自動車関連税制が「大勝負の年」に臨むことになる。

 

自動車ユーザーにとって支払う税金が「高くなる」か「安くなる」かといった視点だけでなく、日本の基幹産業である自動車産業全体の行方も決めかねない。

トル→大きな勝負になるわけだ。

以下、なぜ大変な状況なのかを順をおって説明したい。

税収構造として、抜本改革は「待ったなし」

現在、日本全体の税制の中で「自動車関連諸税」は重要な地位を占めている。税収は年間約9兆円におよび、国の租税総収入117兆円(2024年度見通し)のうち実に7.7%を占める。そして、じつは将来に向けて不安定さを増している。

 

まず、日本において、自動車ユーザーは取得(購入)/保有/走行(燃料)の各段階で合計9種類の税金を支払っている。

 

【図】2023年度租税総収入の税目別内訳並びに自動車関係諸税の税収額(当初)/資料:財務省、総務省【図】2023年度租税総収入の税目別内訳並びに自動車関係諸税の税収額(当初)/資料:財務省総務省

 

このうち年間約1.5兆円を占める「自動車税」は、所有車両の排気量をベースにして算出されている。

排気量が大きければ大きいほど「高級で高性能なクルマだ」ということで、高額課税されているわけだ。

 

近年「大排気量車=高級車」という図式が根本から変わってきていることは明らかだ。

まず、(そもそもエンジンが搭載されていない)BEVは、この税制では対応できない。

また(エンジン排気量が小さい)ハイブリッド車が近年急速に増えている。

 

つまり、CNに向けてクルマはマルチパスウェイ(選択肢の多様化)が進んでいるのに、税制がそれに対応できていないということだ。

 

また、現在年間約2.2兆円を占める揮発油税地方揮発油税も、これまたマルチパスウェイに対応できていない状況だ。

 

 

たとえば18年前に比べると揮発油税の税収は年間6000億円以上減っている。

カーボンニュートラル社会を目指し、官民そろってガソリンと軽油の使用量を減らすべく技術や社会制度を改良しているのがその背景にある。

 

何が言いたいかというと、これまでは燃費改善の社会要請と税制がかみ合っていたわけだが、クルマのマルチパスウェイ化に対応せず、このまま放っておけば、国の大黒柱のひとつである自動車からの税収は枯渇する。

 

税収が枯渇すれば、これまで国民に還元されていた公共事業なども減り、例えば道路整備もなくなれば、老朽化して事故が多発。

さらに治安などの生活における安全さえも担保できない状況に陥る可能性もあるのだ。

 

これら大きな視点を踏まえると、自動車関係諸税の抜本的な改革は「待ったなし」と言える。

こうした状況を踏まえて「自動車関連税制を抜本的に改革する」と宣言した日本政府だが、具体的にはどのような対策を考えているのだろうか――。

 

つづく

<ここにきて分かった、日本人が「車を買わなくなった」本当の理由…高すぎる税金制度を劇的に変える「3つのポイント」>では、諸外国と比べて圧倒的に高い税改正の抜本提案を具体的に示しつつ、日本において最良な方法を考えてみたい。

 

【京都モビリティ会議2024】
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日時:2024年12月7日(土)9:00~18:00
場所:東本願寺緑地広場「お東さん広場」(京都府京都市下京区常葉町他)
参加費:無料
地図:https://maps.app.goo.gl/Cxg3vKBDLCWtTjeu8

 

 

 

ここにきて分かった、日本人が「車を買わなくなった」本当の理由…高すぎる税金制度を劇的に変える「3つのポイント」

 

いま、自動車界は「百年に一度の変革期」を迎えている。2024年末~2025年は、日本の自動車関連税制が「大勝負の年」に臨む年だからだ。

 

自動車ユーザーにとって支払う税金が「高くなる」か「安くなるか」という視点は、円安や物価高が続くなかでもちろん大切な問題だが、それだけでなく、今回の税制改革は日本の基幹産業である自動車産業全体の行方も決めかねない重要な岐路でもある。

 

そんな状況を踏まえつつ、

前編記事の<このままでは日本が破綻する可能性も…ここにきて「自動車税」が危ない状況に陥っている「本当の理由」>に引き続き「待ったなしの抜本改革」を考えてみたい。

写真:iStock写真:iStock

 

税制「抜本改革」の3つのポイント

こうした状況を踏まえて、日本政府は「自動車関連税制を抜本的に改革する」と宣言した。具体的には「令和6年度(2024年度)与党税制改正大綱」において、以下のように記している。

 

<電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて、次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める>

 

「次のエコカー減税期限」とは2026年3月末。

つまりこの1年半で、日本の自動車税制は大きく変わることになる(より厳密には「どう変えるか」を決める)。

 

 

ではハイブリッド車やBEVが増えてゆく次世代モビリティ社会を見据えて、どのような自動車税制がよいだろうと議論されているのか。

 

2024年10月に日本自動車工業会が与党税調に提案した「令和7年度税制改正・予算要望の概要及び自動車税制抜本見直しの改革案」を見てみよう。

改革提案の骨子は主に以下3点。

(1)取得時の税制を「消費税」に一本化

かつて「自動車取得税」という税金があったが、消費税10%への引き上げに合わせて廃止されている。

…が、この自動車取得税は「環境性能割」という名前でこっそり生きており、税率は車両本体価格の0~3%(環境性能に応じ)かかっている。

 

かつてクルマが贅沢品であった時代の名残だが、特に地方では生活必需品になっている自動車の購入ハードルを下げることは、生活困窮者を下支えし、需要を喚起し、国内市場の活性化も狙える。

(2)保有にかかる「自動車税」と「自動車重量税」を統合して「重量ベース」で一本化

上述のとおり、現在の自動車税は「排気量」を基準に定められており、市販車の実態に合っていない。

いっぽうで「重いクルマは道路にかける負担が大きい」という原則はBEVを含む全てのクルマに普遍的だ。

 

現在の自動車重量税自動車税を統合して、重ければ重いほど段階的に課税を重くするよう改良すれば、おおむね実態に即することになる。

 

 

さらに、「環境性能」に応じ課税を増減させる仕組みを導入し、環境性能の良いクルマの開発・購入インセンティブにつながることで、保有車ベースでのCO2削減に貢献できる。

(3)モビリティの受益に応じた新たな課税・負担の枠組み作り

この3つめは将来的な話なのだが、税の基本は「受益者負担」であり、クルマという製品の受益者は、そのクルマの保有者だけではない。

モノや人を運べば、届いた人や運ばれた人が受益者になる。

 

コンビニの配送トラックが走り回っているからこそ美味しい弁当がいつでも購入でき、Amazonで購入した商品が翌日に届く。ラストワンマイルはクルマが担っている現状は、21世紀いっぱい続く見込みだ。

 

だとしたら、見直すべきは「クルマの所有者だけに保有の税がかかる」ことではないか。

カーシェアリングや自動運転の時代に対応できるよう、モビリティの(あえて「クルマの」とは言わない)保有にかかる税金は、「使う人」がまんべんなく負担してゆく制度にすべきではないか。

「製造業」が滅ぶと日本が滅ぶ

そもそもの話として、日本には世界的な自動車メーカーが8つもあるが、いずれも国内市場で苦戦が続いている。ここ30年、日本の自動車新車市場は縮小を続けている。

 

1990年に乗用車(軽自動車含む)、トラック、バスを含む新車販売台数は777万台を記録したが、2023年は477万台まで落ち込んだ。

 

 

その原因の一端は、諸外国と比べて「高すぎる自動車関係諸税」があるのではないか。

そろそろ本格的に見直すべきときが来ている。

 

製造業は雇用や経済を守る日本の宝であるが、21世紀に入ってからは、家電もパソコンも携帯電話も産業として海外勢におくれをとっている。

そんな中、「自動車」は各メーカーが世界を相手に互角以上の勝負を繰り広げ続けている。

 

【図】税負担の国際比較(日本自動車工業会調)【図】税負担の国際比較(日本自動車工業会調)

 

なにも「自動車業界を優遇すべき」「えこひいきしよう」と言いたいわけではない(欧州各国もアメリカも中国もASEAN諸国も、自国の自動車産業を政治的に優遇しているが……)。

 

ただ、我が国の税の基本原則にのっとって、自動車税制も「公平、中立、簡素」なものにしたほうがまだ未来が見えてきそうだ、と言うべき時期に差し掛かっているのではないか。

 

【京都モビリティ会議2024】
ベストカー編集部の本誌とWeb編集長も、登壇。最新車両、次世代技術車、各メーカーの最新技術の展示や、世代&業界を超えたトークセッションも開催。

日時:2024年12月7日(土)9:00~18:00
場所:東本願寺緑地広場「お東さん広場」(京都府京都市下京区常葉町他)
参加費:無料
地図:https://maps.app.goo.gl/Cxg3vKBDLCWtTjeu8