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森永卓郎氏が勧める都心から半径50km圏内の“トカイナカ移住” 「家庭菜園の作業ははがん闘病生活にもプラス」

2018年から農業に興味を持ち、畑を始めたという森永卓郎さん(本人提供。闘病前の写真)

2018年から農業に興味を持ち、畑を始めたという森永卓郎さん(本人提供。闘病前の写真)

 

 人生100年時代を迎え、これから重要になるのが「資産寿命をどう延ばすか」という視点だ。それには資産を増やす&支出を減らすことが必要だ。

「支出を減らす」となると、人生の豊かさが損なわれるイメージを持つかもしれないが、そうとは限らない。

 

『年収200万円でもたのしく暮らせます』(PHPビジネス新書)の著者で経済アナリストの森永卓郎氏は断言する。

 

「お金を使わなくても充実した人生を送る方法はいくらでもあります。

まずは、住宅費にお金をかけないことが大前提です」(以下「 」内は森永氏)

 

 現在がん闘病中の森永氏が提案するのは定年後の「トカイナカ」暮らしだ。

都会と田舎の中間を指す造語で、首都圏であれば都心から半径50km圏内が目安だという。

 

「定年後、人里離れた僻地への移住を考える方もいますが

生活コストはバカになりません。

輸送費の関係で物価は割高なことが多く、

買い物や病院通いにも車やタクシー移動が必要になることもある。

また、濃密な人間関係に馴染めず『憧れの田舎暮らし』に挫折する人は少なくありません」

 

 そう話す森永氏は40年ほど前、埼玉県所沢市郊外に居を構え、都心に「出稼ぎ」に行く生活を始めた。

 

「都心と比べると、同じ間取りでも不動産価格や賃料は半額以下。

物価も割安です。

買い物や病院通いがあっても、公共交通機関を使えばさほど不便は感じません。

その気になれば、ほぼ『自給自足』ができるので、食にかけるお金も激減します」

「家庭菜園の作業で足腰を鍛えることができた」

 森永氏は“トカイナカ”に移住後、自宅近くに畑を借り、約20種の野菜作りを実践。

食費はたちまち半減したという。

 

「わざわざ畑を借りなくても、ちょっとした庭やベランダがあれば野菜は作れます。またトカイナカには農産物の直売所も多いので、野菜類はかなり安く買うことができる。

 

都会で美味しいものを食べるにはお金がかかりますが、家庭菜園レベルでも十分に美味しく、身体に良くて安心な食材を確保できると感じました」

 

 年齢を重ねてからは、「趣味にかけるお金」にも考慮の余地がある。

リタイアしたら、1人でできる趣味を持つことをお勧めします。

趣味仲間が多いと、周りに合わせて無駄な出費がかさんでしまうことが多々あるような気がします」

 

 現在、森永氏が趣味としているのは家庭菜園のほか

トカイナカだからこそ体験できるハイキングやバーベキュー、

野鳥や昆虫の観察など。

 

「今はがん闘病中ですべてを満喫できていませんが、これらはトカイナカ暮らしで見つけた趣味です。

とくに家庭菜園の作業はジムに通う以上に体を使うため、もの凄く足腰を鍛えることができました。今の闘病生活にもプラスになっています」

 

 ほかにもカメラや俳句など、1人で楽しめる趣味は無数にあるという。

「私自身の経験から言えば、いわゆるトカイナカ暮らしで金銭的な節約だけでなく“ストレス・フリー”の恩恵も享受できます。

十分な預貯金がなく、リタイア後の暮らしに不安があるのなら、トカイナカ暮らしが選択肢になるでしょうか」

 

 

【プロフィール】
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年生まれ、東京都出身。経済アナリスト。経済アナリストとしてベストセラー著書多数

 

週刊ポスト2024年5月3・10日号