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関東地方の地震について専門家「今年はより一層警戒を」 千葉県房総半島沖では37〜38年周期でM6以上の地震が発生、2024年は前回から37年目

関東も要警戒(写真/PIXTA)

関東も要警戒(写真/PIXTA

 

 

けたたましい緊急地震速報のアラームと同時に、関東地方を大きな揺れが襲ったのは、3月21日の朝9時過ぎだった。

通勤や通学のために移動する人が多い時間帯だったため、路上や電車内などいたるところで悲鳴が上がり、その場にしゃがみ込む人もいた。

今年元日に、石川県の能登半島で起きた巨大地震が脳裏をよぎった人も多かったのだろう。

 

 震源茨城県南部の内陸で、埼玉県加須市と栃木県下野市震度5弱を観測したほか、広い範囲で震度4を観測した。

地震の規模を示すマグニチュード(以下、M)は5.3。同地を震源とする震度5弱以上の地震は、2022年11月以来、約1年半ぶりだった。

地震を引き起こすプレート研究の第一人者で、神戸大学教授の吉岡祥一さんが解説する。

 

「今回の茨城県南部を震源とする地震は、海側のプレート(厚い岩盤)と陸側のプレートの境界の部分で発生しました。

プレート同士が押し合うことでずれが生じ、大きな揺れが起きたと考えられます」

 

 関東地方で大きな地震が発生するたびに懸念されるのが、「首都直下地震」だ。首都直下地震とは、東京都や近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県などの周辺地域を震源とするM7クラスの地震を指す。

政府は「30年以内に70%」の確率で発生するとして注意を呼び掛けている。

 

 内閣府の中央防災会議が2013年に公表した首都直下地震の被害想定によれば、最悪の場合、首都圏全体の死者数は2万2400人、負傷者は12万3000人で、避難民は720万人にのぼるという。

 

さらに、震源地として危険性の高い19か所を特定して警戒を呼び掛けている。その1つである「茨城・埼玉県境」エリアは、21日の地震震源地と一致する。

地震の規模がM5.3だったため厳密には首都直下地震とは呼べないが、同一視する専門家は少なくない。

地震規模が毎回大きくなっている

 今年に入り、関東地方では地震が頻発している。気象庁の発表によると、今年1月から3月にかけて、関東地方周辺では昨年同期間よりも地震の発生回数が増加。特に千葉県東方沖と千葉県南部を震源とする地震は急増しており、2月26日から3月25日までの約1か月で震度1以上の地震は50回を数え(昨年の同期間は9回)、そのうち3回が震度4の大きな揺れを観測した。

 

何カ所も火の手が上がり煙に覆われる神戸市上空[時事通信ヘリより]

直下型だった阪神・淡路大震災で何か所も火の手が上がり煙に覆われる神戸市上空。(兵庫県/1995年、時事通信フォト)

 

 このように、一定の地域で集中的に地震が発生することを「群発地震」という。千葉県東方沖の群発地震について、東京大学地震研究所教授の小原一成さんが解説する。

 

「陸側のプレートがゆっくりとずれ動く『スロースリップ』という現象によって、群発地震が起きたと考えられます。この現象は、千葉県東方沖の周辺で5〜6年周期で繰り返し起きています。

 

過去のケースでは最大震度5を観測し、断続的に数か月地震が続いたこともあります」

 

 東海大学静岡県立大学客員教授を務め、日本地震予知学会の会長でもある長尾年恭さん(地震予知学が専門)は、「今年はより一層警戒を強める必要がある」と指摘する。

 

「千葉県の房総半島沖では、1912年、1950年、1987年にM6以上の地震が発生しています。注目すべきは、この3つの地震のインターバルです。いずれも37〜38年の間隔で繰り返しているんです。

偶然との見方もありますが、今年は前回の発生からちょうど37年目に当たります」

 

 37年前に起きた「千葉県東方沖地震」はM6.7で、千葉県の広範囲で震度5を記録。2名の死者と144名の負傷者を出した。沿岸地域を中心に道路の陥没や液状化現象も発生し、一部が損壊した建物は6万棟を超えた。さらに、着目しなければならないポイントもある。

 

M6.2→M6.3→M6.7と、地震の規模が大きくなっているため、次の地震はM7クラスになるとの見方もあるのだ。そうなれば関東の広い範囲で被害が発生する。

都心の11区を震度7が襲う

 だが、本当の恐怖はその後に訪れる。

 

「万が一、M7クラスの地震が発生すれば、プレートが刺激されて首都直下地震が誘発されることも考えられます。政府の地震調査委員会は千葉県東方沖で発生している“5〜6年周期のスロースリップ現象”についての見解は発表していますが、この“37〜38年周期”の地震についてはなぜか言及しない。

不安を煽り混乱を招きたくないという考えがあるのかもしれませんが、関東在住のかたは頭に入れておいてもいいのではないでしょうか」(長尾さん)

 

 

能登半島地震での地割れ被害。(石川県/’24年)

能登半島地震での地割れ被害。(石川県/2024年)

 

 つまり今年、首都直下地震が発生してもおかしくないということだ。さらに冒頭で解説した3月21日の地震が、関東地方の地下の異常事態を示唆している可能性もあるという。前出の吉岡さんが、「あくまでも仮説」と前置きした上で話す。

 

「過去に房総半島沖でスロースリップが発生しているタイミングで、茨城県などの内陸部で大きな地震が発生したというのは記憶にありません。今後の経緯を注視して判断する必要はありますが、そういう意味では、今回のスロースリップはこれまでとは様子が異なる可能性もある。

 首都圏は3枚のプレートの上に位置しているのですが、断続的なスロースリップ群発地震、そして今回の地震はプレート全体に力がかかり、さまざまなところで“ひずみ”が限界に達していることを示唆しているのかもしれません」

 

 スロースリップ現象やそれに伴う群発地震は、過去のケースでは2〜3週間ほどで収束している。

だが、今回の群発地震がこのまま収まる気配が見られないようであれば、いよいよ関東地方で大きな地震が発生するリスクが出てくるという。

 

 首都直下地震が発生した場合、甚大な被害が考えられるのはやはり東京だ。東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直し、公表した。

そのなかで、最も大きな被害が出るケースとして挙げられたのは、品川区と大田区の境界付近を震源とする「都心南部直下地震」だ。

 

Mは7.3で、中央区や港区など都心の11区が震度7、東京23区の6割以上の広範囲が震度6強以上の揺れに襲われる。

 

 全壊・焼失する建物は19万4431棟、死者数は最大で6148人と想定されている。東京都は新たな被害想定報告書のなかに「災害シナリオ」も盛り込んだ。

それによると、地震発生直後から広範囲で停電、断水が生じ、ガスもストップする。

 

「2021年に足立区で震度5の地震が発生した際、約30か所の水道管にトラブルが発生しました。その場所は5年前にも同じ規模の地震が発生しているのですが、そのときはわずか2か所だったんです。

これはライフライン設備の老朽化が関係しています。東京都の想定を超える被害が生じる可能性もあります」(長尾さん)

 

 交通網の寸断による救出・支援活動の遅れにより、震災関連死が発生するリスクも指摘されている。

さらに自宅が居住困難となった人々は避難所生活を余儀なくされるが、人口密度の高い東京では、避難所のキャパシティーが足りなくなることも充分考えられるという。

首都直下地震へのカウントダウンは、もう最終盤まで来ている。

 

 

※女性セブン2024年4月11日号