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「なぜ売値ばかりが騒がれるのか…」現役70代農家が明かすコメ騒動への本音と違和感 「安値で販売できたとして根本的な解決にはならない」と考える理由

 

 

生産農家の減少も叫ばれる(イメージ)

 

 

米の小売価格高騰を巡り、小泉進次郎農水大臣の発言が波紋を呼んでいる。「備蓄米を放出し5キロ2000円を目指す」と宣言、農水省発表によれば、6月9日~15日に全国のスーパーで販売されたコメの5キロあたりの平均販売価格は、3か月半ぶりに3000円台となった。ただし現場の農家からは「売値ばかりが騒がれる」と、あくまでも冷静な声が聞こえてくる。


「いろんなものが値上がる中、米だけなぜこんなに騒がれるのか」
 広島県で米を生産しているMさん(70代男性)は、今年も引き続き米の需要が高くなることを見越して増産を決意。休耕田を復旧し、48ha(ヘクタール・1ヘクタールは1万平方メートル)から60haに増やした。「休耕田を復活させる大変さもあまり知られていないのに……」と生産者の厳しさを訴える。

「休耕田を復活させるだけで、荒代(あらしろ)を2回、本代(ほんじろ)を2回しました。どちらも、稲の育成のために、地面の凸凹を平らにして、土を柔らかくする作業です。それでも雑草は沢山生えてきますし、土も他の水田に比べて堅いです。

 政府が米価格2000円台を目指していると言いますが、米農家の本音としては、いい迷惑。せっかく米を高値で売れる機会だし、いろんなものが値上がっているなかで、ふつうに米の価格だって値上がってもおかしくはないのでは。米だけ値上がりしたときになぜこんなに騒がれるのか……」(Mさん。以下「」内同)

 安く米を流通させることで、今後さらに農家にとって厳しい時代が来ると予測している。

「目の前の米を安値で販売することに注力したところで根本的な解決にはならないでしょう。JAは生産者から買う玄米1俵(60キロ)を例年より3~4割高く設定していると聞きます。このまま今後流通する新米の買い付け価格が高いと、市場に出てくるときはどのみち高い状態なのでは」(前同)


 では「根本的な解決」は何かと聞いたところ、「結局、“米は安くない”ということを知ってもらうしかない」という。

「個人的には買取価格として、1俵3万円を当たり前にしてくれたらいいのではと思います。玄米60キロを3万円で買い取ってくれたら、一反(1000平方メートル)の収穫で年間30万円の売上で、やっとコンバインやトラクター、その他もろもろのローンや維持費が払えるようになる。そうなって初めて自分の給料を稲作だけで出せるようになる」

 農水省によれば、2025年5⽉までの年平均価格は60キロ2万4686円。⽐較可能な1990年以降で過去最⾼の価格だというが、Mさんは「ぬるい」とにべもない。

 

 

古古古米の食味をめぐる議論のおかしさ
 政府は令和4年度産の「古古古米」を市場に放出したが、その際世間では「美味しく食べられるのか」と、食べ方や味についての心配が散見された。Mさんはこう語る。

「農家だとまず食べることが無い米ですね。高度成長期頃、米は売った方がお金になるので、家では古い米を食べていたような記憶がありますから、時代が逆行しているような気がします。それに、古米の味について意見を言っている方がいますが、仮に古古古米を美味しいというのであれば、いっそ日頃から国産にこだわらず、安い輸入米を買った方がいいんじゃないの」(前同)

 さらにMさんは「備蓄米」についても疑問を述べる。

「備蓄米は不作や災害といった緊急事態が発生した際に、食べられるように作られた制度で、政府が税金で米を買って、それを国民が買うという行為がそもそもおかしいですね。消費税もかかっていますし、二重で税金を取られているような矛盾を感じます」

 飲食店や家庭にとって、確かに米の価格は重要だ。しかし米を生産する農家の声がなかなか届かないことに、Mさんはため息をつく。