パチスロの新しい出玉機能「ボーナストリガー」(以下、BT)を搭載した機種が、6月2日から導入されている。シンプルなゲーム性のノーマルタイプと射幸性の高いAT機との二極化が顕著な現在のパチスロにおいて、両者の中間的な役割を担うと言われているBT機に対する、ユーザーの反応はどのようなものか。
現在のパチスロは、大きく分けてボーナスのみで出玉を増やす「ノーマルタイプ」と小役を揃えるための押し順などをアシストする「アシストタイム」(AT)を搭載した「AT機」に分類される。そんな中で登場したBTは、ノーマルタイプにボーナスの連続性を追加する機能だ。パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が説明する。
「ノーマルタイプは『ジャグラー』シリーズのような演出がシンプルな機種が多く、射幸性も低い。そこまで大きく負けることも勝つこともないというタイプです。一方のAT機は、特にスマスロ(スマートパチスロ。メダルを使用しない機種)に移行してからは、かなり射幸性が高い機種が増えていて、ハイリスクハイリターンな機種が多い。1日に10万円近く負けるような機種もありますし、逆に同じくらい勝つこともあります。
昨今の人気の傾向は、このふたつのタイプに二分されていて、適度な射幸性と適度な出玉感のある機種が少なくなっている印象です。そんななかで、その部分の需要を狙うべく登場したのが、BT機ということです。基本的にはノーマルタイプと同じで、毎ゲームの抽選でボーナスフラグを引ければ、ボーナスが出てきて出玉が増えるというもの。ただ、ボーナスに連続性があるので、従来のノーマルタイプよりも1回のボーナスで獲得できる出玉が多いというのが特徴です。ただ、BT機では、ATなどの機能は搭載できないというルールもあります」
ファン層によって異なる反応
6月2日には、『スマスロニューパルサーBT』、『LBプレミアムうまい棒』、『翔べ!ハーレムエース』、『LBパチスロ1000ちゃんA』、『LBジャックポット』という5つのBT機がホール導入された。中でも特に注目度が高いのが、『スマスロニューパルサーBT』だ。同機種は、パチスロメーカー山佐の人気機種『ニューパルサー』シリーズのBT機バージョンという位置づけだ。
「『ニューパルサー』は1993年にホールデビューした4号機。ボーナスに当選すると“リーチ目”と呼ばれる特別な出目が出現し、そのリーチ目を見抜くこともこの機種の楽しみ方のひとつです。古くから人気のシリーズということもあり、比較的年齢層の高いユーザーに支持される傾向があります」(藤井氏、以下「」内同)
今回導入されたBT機の中でもっとも導入台数が多いのが『スマスロニューパルサーBT』だが、この機種に対する反応は少々辛口なものも少なくない。SNSでは〈波が荒くなって、余計に遊びにくくなった…〉、〈ニューパルと思わなければふつうに面白い〉、〈BT機というものに光は見えたんだけどニューパルではなかったなって思いました〉、〈おもろいのかどうかは置いといて、ビッグ300枚ってのがよかった〉といった声が聞こえてくる。
「過去のニューパルサーシリーズとの演出面での変化に違和感を抱くユーザーも少なくなかったようです。ノーマルタイプを支持するユーザーの中には、かなりこだわりが強いユーザーも多く、新しい機種に対する厳しい意見が出てくることはよくあります。
とはいえ、ユーザーによって評価がかなり違ってくるという現実もあります。ノーマルタイプのコアなユーザーは過度な演出を嫌う傾向にあり、ボーナスが当たったかどうかを“出目”で見抜きたいという人も多いんですが、一方で比較的パチスロ歴の浅いユーザーはそれなりに派手な演出で、なおかつ今どのような状態なのかがわかるような親切さがあったほうが好まれやすい。
『スマスロニューパルサーBT』について言えば、ノーマルタイプファンには『必要ない演出が多い』と感じられており、AT機に慣れているライトユーザーからは『演出がなさすぎて不親切だ』との声があります。ノーマルタイプのユーザーとAT機のユーザーの中間層の需要を狙うというBT機なので、両者のテイストをミックスした機種になるのは自然な流れでしょうが、その結果どっちつかずになっているようにも見える。今後ラインナップされているBT機の注目機種は、過去の人気シリーズのBT機バージョンが多いので、今回と同様の反応が出てくる可能性もあるでしょう。BT機の開発においては、このあたりのバランスが重要になってくるのかもしれません。
また、『出玉の波が荒い』との意見もありますが、裏を返せばノーマルタイプよりは出玉性能が高く、BT機らしいスペックになっているということでもあります。その点については、BT機のメリットをしっかり示せていると思います」
“最後の一勝負”に向いているBT機
パチスロ機に搭載されるボーナスは、最高払い出し枚数が決められており、現行の6号機では最大300枚となっている。6号機のノーマルタイプの場合、ビッグボーナスの獲得枚数は、200枚から250枚程度の機種が多い。しかし、BT機ではボーナスを連続で獲得できるので、一連のボーナスで300枚ほどを獲得しているように見せることができる。
「5号機から6号機になって出玉性能の制限が厳しくなり、ボーナスの最大獲得枚数は480枚から300枚に減りました。このような出玉規制は、5号機時代にノーマルタイプを楽しんでいたユーザーにとってはかなり受け入れ難いものだったわけです。しかし、今回BT機が登場したことで、5号機時代のノーマルタイプの出玉感が戻ってきたというのは間違いない。このポイントを上手く、アピールすることで従来のノーマルタイプファンの支持を得られる可能性はあると思います」
また“最後の一勝負”にBT機が活躍するのではないかとも言われている。
「AT機の場合、機種によって“ここがヤメ時”という状況があります。その状況になったとき、ある程度の出玉があれば、それを交換すればいいんですが、そこで数十枚くらいしか残っていなかったとき、『交換するくらいなら別の機種を打って一勝負しよう』と考えるユーザーは結構多い。そこで従来のノーマルタイプだと、余ったメダルでビッグボーナスを1回引いても250枚くらいにしかならないけど、BT機であれば300枚とか500枚とかになるかもしれない。そういう意味でBT機は、ユーザーにとって“それなりに勝負しがいのある機種”とも言えるかもしれません。
現時点では、射幸性の高いAT機とそうではないノーマルタイプの二極化が顕著であり、BT機の存在感を示すのは簡単ではなさそうですが、特殊な状況下で選ばれる機種としての道もありうるような気がします」
BT機もまだまだ導入されたばかり。今後、どのような形になってユーザーの支持を得ていくかにも注目だ。