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パチンコホール経営法人が10年で半分以下に減少、大手チェーンによるM&Aが活発化 ホールごとの特色が薄れる中でユーザーにとってのメリットは

大手チェーンによるM&Aが活発化するパチンコ業界(イメージ)

 

 

 1990年代中頃のピーク時には30兆円とも言われていたパチンコ産業の市場規模。徐々にその規模が縮小し、現在はその半分の15兆円規模となっている(日本生産性本部レジャー白書2024』より)。そんななか、パチンコホールを経営する法人も減少し、10年でその数が半分以下になっていることが明らかになった。


 帝国データバンクは6月12日、『パチンコホール経営法人の実態調査(2024年)』を発表した。同調査によると、2024年のパチンコホール経営法人の数は1201社で、前年から135社減っている。2015年は2618社であり、10年の間に約54%も減っているのだ。

 コロナ禍以降、パチンコホールの閉店やホール経営法人の倒産、そして大手法人によるM&Aが増えている。パチンコ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏はこう話す。

パチンコホールの倒産の歴史は、出玉規制の歴史と重なる部分が大きい。パチンコ、パチスロにおいては射幸性が高い機種が人気になる傾向がありますが、射幸性が高すぎると今度は警察庁が出玉規制の方向に進んでいく。規制が厳しくなり、射幸性が低い機種ばかりになるとユーザーが離れ、ホールの売上が減り、そして倒産や廃業が増える。

 特に影響が顕著なのがパチスロの出玉規制で、4号機から5号機に移行した2005年から2007年あたりには閉店するホールが多かった記憶があります。また、5号機から6号機に移行した2020年から2021年にかけてはコロナ禍の影響もあってユーザーが激減し、多くのホールが閉店しています。そういったなかで、中小規模の法人が廃業を選択するのは仕方がないことでしょう。

 一方で、全国規模で展開する大手ホール法人には積極的なM&Aを行う会社も多く、大手がより強くなっている傾向もあります。かつてはさまざまな規模感のホールが日本中で営業していましたが、最近では大手チェーンのホールばかりになりつつある。設置台数の少ない小規模ホールもどんどん減っています」


 前出の『パチンコホール経営法人の実態調査(2024年)』では、パチンコホール経営法人の総売上高に関するデータも公表されており、2024年の総売上高は11兆7133億円で、前年から5.0%増加しているものの10年前の2015年との比較では10兆円以上減少している。

「2024年は、パチンコでは大きな動きがあったわけではないものの、パチスロの方はかなり好調でした。特にメダルを使わないスマートパチスロ(スマパチ)は射幸性が高い機種も多く、ユーザーからの支持が回復しています。ただ射幸性が高いがゆえに、ユーザーが使うお金が増加傾向という問題もあります。それはギャンブル依存症対策とは逆行すると言えますし、射幸性が高くなりすぎるとまた出玉規制の流れになってくる可能性もあります。もし出玉性能が制限されてしまうと、当然ながらユーザー離れにつながっていくでしょう。4号機後期や5号機後期のような状況になりかねないということです」(藤井氏)

 

 

大手チェーンのイベントが活発に

 ホール経営法人が減少し、大手優位となっている状況は、ユーザーにとってどんな影響があるのだろうか。地域の競合店が減ることで、ホールによるサービスの低下を懸念するのは、神奈川県に住む会社員・Aさん(50代男性)だ。

「私の住んでいる地域はパチンコホール競合地区なんですが、それでもやはりホールの数は減っています。昔は、『あっちの店はパチンコが強い』『こっちの店はパチスロジャグラーが強い』と、各ホールにいろんな特色があって、それがホール選びの重要な要素にもなっていたもの。

でもいまとなっては大手チェーンのホールばかりになり、どこのホールもそこまで明確な特色がなくなってしまった。昔に比べると、出玉によるサービスも減った気がして、残念です」

 大手チェーンのなかには、積極的な出玉サービスを行う店もある。パチスロを好んで打っているという都内に住む会社員のBさん(40代男性)は、こう話す。

「近所の駅前には、コロナ禍前は小規模なホールが2店舗、大手チェーンが2店舗あったんです。それが、いまは大手チェーン2店舗だけ。元々小規模なホールはお客さんも少なく、私もほとんど行ってなかったので、閉店については納得感もある。大手チェーンの方は、最近になってイベントを積極的に行うようになっていて、お客さんも増えている印象です」

 かつてはパチンコホールにおけるイベントの宣伝広告が厳しく規制されていたが、現在ではルールが定められ、イベントが開催しやすくなっているという事情がある。

「数年前まではイベント規制が厳しく、地域によってはイベント開催自体が難しいこともあったんですが、いまは全国的に統一されたルールのもと、射幸性を煽らない形でのイベント開催ができるようになっています。特に大手ホール経営法人は、自社の公式YouTubeチャンネルで人気パチンコ・パチスロライターやYouTuberなどの“演者”を起用した番組を多く配信し、その演者の“来店イベント”にも積極的です。SNSでの宣伝なども含め、ネットメディアを活用することで集客を狙うホールも増えています。ユーザーにとっては、ネット上の情報から“熱いイベント”を見つけることもできるようになっており、その点はメリットと言えるでしょう」(藤井氏)


 コロナ禍を経て、形が変わってきているパチンコ業界。再び多くのユーザーを取り戻すには、大手チェーンの経営努力こそが重要になってきそうだ。