5月下旬、『業務スーパー』が販売した冷凍ピーマン(千切り)の一部から基準値を超える残留農薬が検出された。
運営会社の神戸物産は「検出された値はごく微量で、通常に食べる量なら健康被害の可能性は極めて低いと考えられる」としつつ、全6万品の自主回収を決定した。
業務スーパーではその直前に中国産の冷凍大根(輪切り)で残留農薬が検出されており、全品回収を発表したばかりだった。
厚生労働省の公表データを見ると、2024年度だけでも168件の輸入冷凍食品の食品衛生法違反事例が確認できた。
違反リストで目を引くのは、60件と3割以上を占める中国からの輸入品だ。
ニンジンやブロッコリー、タマネギなど様々な野菜類が“不適格”となっている。
食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が言う。
「中国産の冷凍野菜の違反が目立つのは輸入量が多いことを示しています。
中国では生産過剰で余った野菜を冷凍加工して安価に輸出する体制を早くから確立しました。
日本でも外食産業を中心に多く使われていますが、日本で禁じられている農薬が使われたり、残留農薬の基準値を超えたまま冷凍加工されたりする例が散見されます」(小倉氏)
食中毒を起こす「大腸菌群」の検出も目立つ。
韓国産のチャンジャや中国産のエビ団子、フィリピン産の切り身イカなど80件以上で大腸菌群が検出。
韓国や中国、東南アジア諸国から輸入された魚介類が多かった。
「現地の製造工程が非常に不衛生であることの証左と言えます。日本で一定の冷凍技術を持つ食品工場ならHACCP(ハサップ)という国際的な衛生管理基準を導入・徹底していますが、中国や東南アジアの中小レベルの事業者ではこうした国際基準が導入されていないのが実情です」(同前)
スウェーデン産のビルベリーから放射性物質を検出
さらに小倉氏は、ベトナム産エビ類で、EUでは使用が禁じられているエンロフロキサシンなど、人体への有害性が指摘される危険な抗生物質が多く検出されている点も気がかりだと言う。
「現地ではここ20年ほどの間にエビの養殖が急速に拡大し、ベトナム南部のメコンデルタでは稲作農家が次々にエビの養殖業に転じました。
過密な状態で大量に養殖するため病気が発生しやすくなりますが、生産性を落とさないよう飼料に大量の抗生物質が添加され、多くの残留違反に繋がっていると見られます」
仮に違反事例に該当する食品を口にしても、直ちに深刻な健康被害が生じるとは限らない。
だが小倉氏は「大腸菌群のE.coliなど、食中毒を招く細菌に汚染された食品は、子供や高齢者が摂取・感染すれば命に関わる事態に発展する恐れがある」と警鐘を鳴らす。
ほかにも、健康に与える影響から看過できない違反事例はいくつもある。
「たとえば中国からの輸入品である『菜の花』から検出された殺菌剤テブコナゾールがそのひとつ。
内閣府所管の食品安全委員会のデータによると、動物実験で甲状腺や肝細胞の腫瘍を引き起こしたことが認められています。
同じく中国からの冷凍ヤマモモで検出された殺菌剤ジフェノコナゾールは、発がん性試験の結果、肝細胞腺腫および肝細胞がんが認められています」(同前)
なかには「放射性物質」が検出された事例もある。消費者問題研究所代表の垣田達哉氏が言う。
「2024年度はスウェーデン産のビルベリーから日本の基準値の1.6倍にあたる放射性物質が検出されています。
過去には基準値超えのブルーベリージャムが市場に流通、輸入業者に回収が命じられたこともありました」(垣田氏)
※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号