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【スーパーの中国産ピーマンから基準値超えの残留農薬】「冷凍加工で菌が完全に死滅したり、添加物や農薬が消えることは基本的にない」輸入冷凍食品のリスク

 

輸入冷凍食品のリスクとは(写真:イメージマート)

 

 

 安く大量にまとめ買いできるとして人気を集める「業務スーパー」。5月下旬、同チェーンが販売した冷凍ピーマン(千切り)の一部から基準値を超える残留農薬が検出された。


 運営会社の神戸物産は「検出された値はごく微量で、通常に食べる量なら健康被害の可能性は極めて低いと考えられる」としつつ、全6万品の自主回収を決定した。

業務スーパーではその直前に中国産の冷凍大根(輪切り)で残留農薬が検出されており、全品回収を発表したばかりだった。

 温めるだけの調理済みだけでなく、近年は“下ごしらえ”済みのカット野菜や魚介類などの冷凍食品が人気だ。

なかでも比較的安価な輸入品のニーズが年々高まっており、農林水産省によると、昨年の冷凍野菜輸入量は約117万トン、輸入額は約3319億円といずれも統計開始以来最高を記録した。

金額ベースでは中国産が約半数を占めている。

 一般家庭では使う分だけ少量ずつ消費できる冷凍食材が重宝されるが、個人経営の飲食店でも事情は変わらない。

都内で居酒屋を経営する店主が言う。

「加熱調理する料理ではタマネギやニンジン、ニンニクなどの輸入冷凍野菜を使います。

調味して炒めるなどすれば生鮮との味の差は感じられません。

海鮮系ではエビやカニ、アサリなどで冷凍の輸入ものが多い。

手間がかからないことが一番の理由ですが、食品ロスを避けるために保存がきく冷凍食材が便利ですね」

 特に野菜は天候次第で仕入れ値が乱高下するため、経営上も比較的価格が安定している冷凍ものが使いやすいという。

 

 

2024年度だけでも168件の輸入冷凍食品の違反事例

 そうしたなか、今回の業務スーパーの商品回収により「輸入冷凍食品」の安全性が揺らいでいる。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が言う。

「2007~2008年にかけて発覚した中国産冷凍ギョーザ中毒事件(※)まで、冷凍食品は“加工食品”という位置付けで残留農薬の検査は義務化されていませんでした。

事件を機に残留農薬検査が実施されるようになり、近年は冷凍食品の食品衛生法違反事例が多数報告されています」

【※中国「天洋食品」が製造、日本に輸入・販売された冷凍ギョーザから農薬「メタミドホス」が検出され、ギョーザを食べた3家族10人が重篤な中毒症状を起こした事件。のちに、農薬混入は同社社員の故意によるものだったことが判明】

 厚生労働省の公表データを見ると、2024年度だけでも168件の輸入冷凍食品の違反事例が確認できた。

消費者問題研究所代表の垣田達哉氏が指摘する。

「違反内容の内訳は、野菜類は農薬、水産物や畜産物は大腸菌などの細菌類が多い傾向です。冷凍食品には“安全だろう”とのイメージがあるかもしれませんが、大きな間違いです。

冷凍加工で菌が完全に死滅したり、添加物や農薬が消えることは基本的にありません。

輸送中に新たな菌が付着・増殖するリスクが低いだけで、冷凍前に汚染されていれば、解凍後もリスクはそのまま残ります」

 具体的に最近ではどのような違反事例があるのか。関連記事《【輸入冷凍食品の食品衛生法違反事例・2024年度の168件全リスト】韓国産チャンジャ、ベトナム産エビ、中国産ブロッコリーほか 輸入業者が明かす現地工場の杜撰な実態》では、輸入冷凍食品の食品衛生法違反事例について、全168件リストとともに詳細を解説している。




週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号