より美味しくしよう、長持ちさせよう、安く提供しよう……私たちの健康を損ねかねない食品産業の〝工夫と努力〟には注意を怠るべからず。
添加物が多く含まれる
「私たちの祖先は長い間、限られた食べ物しかない環境を生き抜いてきました。文明が発達して『加工食品』がつくられ、手軽にかつ効率的にカロリーを摂取できたことで、社会も発展できた。ところが最近、高度に加工された食品、いわゆる『超加工食品』の食べ過ぎによる健康被害が大問題になっています」
米・ボストンに住む医学博士で、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』の著書もある大西睦子氏が警鐘を鳴らす。
超加工食品とは、一般に5種類以上の原料を工業的に加工した食品で、糖質、脂質、塩分のほか添加物が多く含まれる。ブラジル・サンパウロ大学教授のカルロス・モンテイロ氏が提唱した概念だ。
彼は加工の度合いに応じて食品を4つのグループに分けた(NOVA分類)。
グループ1は未加工かほぼ加工されていない穀物や肉、魚、野菜など。グループ2は加工調理用の材料で、植物油や味噌、醬油など。グループ3は加工食品で、調理材料を加えて製造された、うどんや缶詰、かまぼこなど。
そしてグループ4が超加工食品で、菓子パンやスナック、インスタント麺、ゼリーなどだ。小麦粉や食塩だけではなく、香料や乳化剤など家庭にはない添加物が複数入っているパンは超加工食品にあたる。
日本人の食べ物の4割を占める
「'21年に米・ノースカロライナ大学のチームが、調査対象者が一日に摂る食事のうち、各グループがどれだけの割合を占めているかを、カロリーに基づいて計算しました。その結果、イギリスでは57%、アメリカでは59%もグループ4が占めていたんです。日本でも38.2%を占めていたので、日本人の摂る食べ物の約4割は超加工食品だということです」(大西氏)
近年、この超加工食品の摂取量が多い人は、糖尿病や心血管疾患、がんにかかるリスクが高いという研究結果が次々と示されている。
大西氏が続ける。
「フランスの研究チームが'19年に発表した論文では、一日の摂取カロリーに占める超加工食品の割合が10%増加するごとに、2型糖尿病にかかるリスクが15%高くなることが示されました。
また'21年に発表された中国・重慶医科大の研究では、超加工食品の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループより、心血管疾患で死亡するリスクが50%、心臓病全体で死亡するリスクが68%高いことがわかった。
さらに'22年、米・ハーバード大などの研究チームにより、20万人以上の健康状態を24~28年間にわたって調べた結果、超加工食品を食べる量が最も多いグループの男性は、最も少ないグループの男性に比べて、大腸がんを発症するリスクが29%高いとわかりました」
認知機能の低下やうつ病のリスクも
それだけにとどまらない。ブラジル・サンパウロ大学の研究者らが、'22年に発表した研究によると、超加工食品の摂取量が最も少ないグループより多い人は、脳の実行機能が25%速く低下し、全体的な認知機能が28%速く低下した。
スペインの研究者らが'20年に発表した論文では、超加工食品の摂取量が最も多いグループはうつ病を発症するリスクが33%高いという―。
まさに万病のもととなり、寿命を縮める超加工食品。インスタント食品だけでなく、身体によさそうだと思ってつい手に取ってしまう食べ物こそ要注意だ。
本誌はそんな超加工食品をピックアップし、製造するメーカーに、健康を害する恐れのある食品のリスクについてどう考えているか、なぜ多種類の添加物を使うのかについて見解を求めた。それをまとめたのが上図表である。
ゼロ シュガーフリーチョコレート(ロッテ)や明治ブルガリアヨーグルト脂肪0、ザバス プロテインバー(明治)、骨にカルシウムウエハース(ハマダコンフェクト)など、健康に訴える商品も添加物が多く含まれている。
添加物を使う理由について、健康への悪影響がない許容範囲内で、風味や食感をよくし、保存性を高めるためだと多くのメーカーが答えた。
「週刊現代」2025年6月9日号より