サプリで摂ってはいけないビタミン、摂っていいビタミン…専門家が警告する「間違った健康法」
「健康的ではない」もので溢れている
仕事の付き合いや多忙なせいで、つい外食やコンビニのご飯で1日の食事を済ませてしまう。
足りない栄養素はサプリメントで補助してしまおうーー。
そんな健康習慣は最近では一般的になってきた。
しかし、サプリメントは手軽に栄養を補給できる一方で、使用には注意も必要なことをご存知だろうか。
「特に、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDといった脂溶性ビタミンは、摂りすぎると体に蓄積され、悪影響を与えてしまうこともあります」
そう語るのは、『4日で若返る「毒出し」のトリセツ』(すばる舎)の著者で、薬草学をベースにしたファスティング「ハーブ・ファスティング」開発者の織田剛氏だ。一橋大学大学院修士課程卒業後、フランスで哲学を学ぶ傍ら、薬草学を学んだ経緯を持つ。
「サプリメントとの正しい付き合い方を知らなければ、かえって”毒”を身体に溜め込んでしまうこともあります。
サプリメントだけでなく、風邪薬や入浴剤なんかにも体に悪い成分が入っている場合があるので、注意が必要です」
ビタミンDの摂取が重要。ビタミンB、Cは水溶性で体から排出されやすい
サプリメントと一口で言っても、どれもが効果が高いとは言えない。
たとえば、ビタミンAは目の健康を維持というプラスのイメージがあるかもしれない。しかし適切な量を誤り、過剰摂取してしまうと肺がんのリスクが高まるというデータがある。
かつては、主に発展途上国で不足されがちと言われるビタミンAの摂取が推奨されていたが、現在ではそのリスクが指摘されているのだ。
「ビタミンAは脂溶性のため、体に蓄積しやすい。
そのため、サプリメントからビタミンAを摂ると過剰摂取になりやすいわけです。
なので、ビタミンAは食べ物から摂ることが望ましい。
にんじんに多く含まれるβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。
摂りすぎているかもしれないという人は、サプリメントの使用を控えてください」
同じく、「ビタミンE」も過剰摂取が起こりやすいという。
代謝に時間がかかってしまうからだ。
ビタミンAと同様に、長期的な過剰摂取はがんリスクを高めてしまうので、サプリメントからの摂取は気をつけたほうがいいだろう。
「ビタミンB」と「ビタミンC」も同様だ。いずれも「積極的に摂取するとよい」とされるが、摂取方法には気をつけてほしい。
「どちらも水溶性ビタミンで身体に蓄積されず排泄されるため、毎日の食事の中から一定量を摂取しなければ不足してしまう。
ただし、長期的に大量に摂取すると、体に負担がかかってしまう。
野菜をあまり食べていないときや疲れを感じたりするときに、一時的に摂取するのがよいだろう」
サプリを飲むだけで健康になれるという安易な考えは見直したほうがいいのだろう。
ではサプリメントから摂取したほうがいいビタミンは何なのだろうか。
「ビタミンDは、骨やカルシウムの生成に関わるだけでなく、ホルモン生成にも重要な役割を果たしています。
ビタミンDは、マグロやサバ、ニシンなどの魚油、しいたけなどのきのこ類、鮭などの魚類や卵から摂取できるほか、紫外線に当たることで皮膚でも生成されます。
骨粗鬆症予防に、日光を浴びることがいわれるのはそのためです」
現代人は日焼け止めを塗ったり、屋内で過ごすことが昔に比べて増えたため、ビタミンDが不足しがちな人が多い。
2023年に、東京慈恵会医科大学と島津製作所のチームが発表したデータによると、調査した5518人のうち98%がビタミンD不足だったという。
サプリメントをあまり飲まない人でも、日光を浴びる機会が少ない冬場などは意識してビタミンDを摂取したほうがいいだろう。
どのビタミンを摂ればよいのかわからない人の中には、「バランスよく栄養素が摂れる」という理由でマルチビタミンを摂る人もいるだろう。
だが、織田氏からすると、マルチビタミンは最も危険なサプリメントだという。
「『マルチビタミン』と謳っているサプリメントは、何種類ものビタミンやミネラルが配合されているが、中には不要な成分や、過剰摂取によって体に悪影響を及ぼしかねない成分が含まれています。
自分の健康状態に照らし合わせて、成分表示を確認し、必要なものだけが含まれているものを選ぶよう心がけてほしい」
総合感冒薬は、治癒を遅らせる効果も
ここまで紹介したサプリメントは主にドラッグストアで売られている。
他にも、同じくドラッグストアで売られている風邪薬や入浴剤を選ぶ際にも、注意が必要だという。
例えば、頻繁にCMを打っているような総合感冒薬だ。風邪を引いたり、熱が出たりした時に使うものだ。
咳やくしゃみを抑える抗ヒスタミン剤などが配合された薬だ。
風邪のさまざまな症状に効くように思われがちで、多くの人が気軽に使っているのではないか。
しかし、実際は症状を抑えすぎて治癒が遅れることがあることをご存知だろうか。
「身体には負荷が強い成分が含まれている薬もあるため、風邪の症状に合わせて咳には咳止めを、鼻水には鼻水止めを使うほうがよっぽど安心です。
ちなみに、私の場合は風邪の症状が出たらハチミツを摂るようにしています。
もちろん、すべてのハチミツに効果があるわけではありません。
製造過程が不明なものや、抗菌効果が期待できないものもあるため、信頼できるメーカーのものを選んでほしい。具体的には、マヌカハニーや純粋なハチミツ(1000円以上)を選ぶといいでしょう」
身体に接種する栄養は内側だけでなく、外側から摂取するものもある。
その代表例が入浴剤だ。
リラックスしたい、肌の状態をよくしたいと、ドラッグストアやスーパーで購入する人も少なくないだろう。
だが、そのほとんどは石油由来の入浴剤であり、使うとかえって肌が疲れやすくなることすらある。
もし、入浴剤を使って身体の外側から健康になりたいならば、薬草など天然成分を使った入浴剤や、ハーブやヨモギを湯船に入れるほうが肌に優しく、健康効果も高い。
このように”栄養”、”健康によい”というコピーが記載された消費を手放しで称賛することはかえってあなたの身体を蝕む危険性をはらんでいるのだ。
“酵素ファスティング”にはデトックス効果がない
一方、そうした身体の”毒”を出すために、最近では「ファスティング」も注目を集めている。ファスティングとは、普段の食事を数日間だけ抜くことで、胃や血管を休ませる行為のことである。
特に、「酵素ファスティング」と呼ばれる方法は日本人が行うファスティングの中で有名だ。
酵素ファスティングは、体内のリセット効果が期待できるという説明が書籍や多くのネット記事でよく見かける。
しかし、実際には「酵素ファスティング」の方法や理論には多くの誤解が存在しているという。
「そもそも、ファスティングに酵素を使っているのは世界的には日本とアメリカの一部だけだ。
事実、私が博士課程で留学していたファスティング先進国であるフランスでは、酵素を使ったファスティングはまったく一般的ではありませんでした。
なぜなら、一般的な酵素ドリンクを用いたファスティングでは、ファスティング期間中も糖質を摂取し続けるため、内臓が休まらないわけだ。
これでは体内にある”毒”を排出できず、デトックス効果も期待できません。
世界的には、酵素ではなくハーブティーを取り入れたファスティングのほうがむしろ主流なのです」
正しいファスティングの方法
織田氏が薬草学を学んだフランスで主流のハーブティーを用いたファスティングでは、新鮮なスープを摂取しながら適宜ハーブティーを飲むことで、毒出し期待できるだけでなく、リラックス効果も得られる。
ハーブは苦味があるため、常飲するというよりは薬のようにハーブティーとして飲むことが推奨されている。
4日間続けると、徐々に効果が現れるという。
「1日目と2日目は空腹を感じるが、3日目になると新しい細胞が活性化し、3~4日目にはタンパク質や脂肪の燃焼モードに入ります。体は老化し、古くなった細胞を壊して新陳代謝を促進します。
この過程で、不要な細胞が組織内に蓄積され、老化細胞=ゾンビ細胞が発生し、それがシワの原因になる。
そのため、ハーブティーファスティングで細胞をリフレッシュさせることが重要なのです。
ただし、過度に行うと痩せすぎる可能性があるため、中毒にならないよう注意してほしい」
体質によって合う・合わないがあるため、自分の体調に合わせて調整することが大切だ。「今月は腸を意識して生活を送る」「来月は肝臓を意識して食生活も見直す」など、毎月テーマを決めてハーブティーファスティングを行うのもよいだろう。
他のファスティングだと、味噌汁とオイルを用いた方法も効果的だ。これは、日本の伝統的な「断食療法」をベースにした方法で、腸内環境を整え、免疫力を高めることを目的としている。
味噌汁は発酵食品であり、乳酸菌や食物繊維が豊富なため、腸内環境の改善が期待できる。
また、オイルは腸の蠕動運動を促進し、便通の改善に役立つのだ。