サブスクが普及するなか、ビデオソフト市場(DVDとBDのセルおよびレンタル)の売上は減少の一途をたどっている。
ビデオソフトメーカー各社が加盟する一般社団法人日本映像ソフト協会の資料によると、2012年に4802億円だった市場規模も2023年には2132億円と半分以下だ。
消えゆくレンタルビデオ(DVD・BD)の現場で、いまもなお根強いジャンルは「成人向けコンテンツ」なのだという。
客層は中高年以上が多く、なかには万引きする不届き者もいる。
レンタルビデオ店の店員が実状を明かす──。【前後編の後編】
店員は「セルフレジはいいことが一つもない」
「セルフレジ導入で、万引きに拍車がかかりました」
数を減らし続けるレンタルビデオ店で、奮闘する店員・Sさん(30代/男性)が嘆く。
“レンタル落ち”するDVDは格安で売られることも多く、Sさんいわく「とりわけ人気が高いのは成人向けコンテンツ」だ。
都内のある店舗では、実にひと月2000本以上のレンタル落ちDVDが投げ売りされ、多い月はそれだけで100万円以上の売上になることもある “人気商品”。
その裏では、しれっと盗んでいく輩も多いのだという。
Sさんは「ただでさえ、成人向けコンテンツを店員のいるレジに出すのは気後れがするという人も多い。
そういう人にとって、セルフレジは本来都合のいい精算手段なのですが……」と疲れた表情をのぞかせる。
「セルフレジ導入後、一番多かったのは“大量のDVDのうち2、3枚だけを会計して、残りを袋に入れて持ち出す”という手口です。
セルフレジはスタッフカウンターから見える位置にありますが、すべての会計を目視でチェックできるわけではありません。
しかも、仮に不正を見つけて捕まえたところで、『会計し忘れた』と言われてしまうとこちらも強く出られない」(Sさん。以下「」内同)。
Sさんの店舗では、未精算の商品を持って外に出ると音がなるよう、タグをつけていた時期もあるが、セルフレジ導入とともに、店員がはずさなくてはならないタグは廃止。
「新札対応もおおわらわでしたし、セルフレジはいいことが一つもない」とSさんは言う。
「有効」な万引き対策は
とはいえ、店側も可能な限りの対策を講じている。それが効果を発揮し、Sさんの店舗でも現行犯逮捕に至った事例は少なくないという。
「万引きをする人はカメラの死角に入ろうとしますが、当然その死角は店側も把握しているので、注意を払っています。
その他定期的にロスチェック(在庫ズレの有無をチェックすること)を行ない、ロスチェックの過程で万引きが発覚した場合、監視カメラで犯人を特定し、顔写真や服装の特徴などを全スタッフに共有します。
また、監視カメラの映像はリアルタイムでチェックしています。犯行を見つけた場合はすぐ警察に通報したり、私服スタッフが直接取り押さえたりすることもあります」
被害がなかなかゼロにならない万引きに、どう向き合っていくべきか。Sさんは「結局、いちばん好ましいのは万引きさせないことに尽きますが、その手段は機械ではなく“人”でしょうね」と話す。
「やまびこ挨拶(入店に気づいたスタッフがお客様に声をかけ、店内の従業員全員が同じ挨拶を繰り返すこと)の徹底や、日次業務として店内パトロールの実施などの防犯対策も行ないます。『このお店は万引きしづらいぞ』と思わせることが重要なんです」
レンタルビデオ店は、実物を手に取って選ぶ楽しみがあったり、希少性の高い作品を入手できたりと、サブスク時代においても貴重な場所だ。レンタル文化を脅かす“万引き”がなくなることを願ってやまない。