夫婦共働きの高収入カップルは、近年「パワーカップル」と呼ばれている。
2024年4月のニッセイ基礎研究所のレポートでは、「夫婦共に年収700万円以上」をパワーカップルと定義しているが、世帯年収1400万円を超える夫婦たちの生活はどのようなものか──。
厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、2023年における世帯収入の中央値は405万円、世帯ごとの平均所得金額は524万2000円であるから、やはりパワーカップルは“選ばれし夫婦”のように思える。
実際に、夫婦共に700万円以上のパワーカップルは2023年で40万世帯、総世帯で見るとわずか0.69%、共働き世帯の中でも2.42%と、その数は圧倒的に少ない。
そんな憧れの対象ともいえるパワーカップルだが、皆が皆、贅沢な暮らしを満喫しているわけではない。
特に家賃や物価の高い東京23区内で暮らす共働き夫婦の中では、“質素な暮らし”を強いられているケースは珍しくないようだ。
都内のIT系コンサル企業で勤務する男性・Aさん(35歳)は、ベンチャー企業で働く妻(34歳)と共働きで、世帯収入が1800万円超えるパワーカップルだ。
しかし、生活に派手さはまったくないと語る。
「大学時代の同級生同士で結婚しました。お互いが就職したころに付き合い、3年くらい同棲してから結婚。子どもはいません。昨年、僕の名義で住宅ローンを組み、中古の家を買って暮らしています。
お互いの年収を合わせると、1800万円くらいになりますが、本当に質素に暮らしていますし、金銭感覚も良い意味で大学時代からあまり変わっていません。
住宅ローン支払いが毎月15万円くらいあるので、手取りでいうとそんなに余裕があるわけじゃない。結婚式もしなかったし、2人で海外旅行にも行っていません。
将来の金銭的な不安も大きいので、浪費するよりも、夫婦でつみたてNISAなどに上限まで投資したり、地道に貯金したりしています。
僕の服も基本的に全身ユニクロ。そうは言ってもおしゃれは楽しみたいので、そこに時々、古着のアイテムを混ぜたりする感じですね。
在宅勤務が週に2日あるので、家から出ないで一日中スウェットの日も多く、物欲はあまりどないんです」(Aさん)
都心に生活基盤があると出費がかさむ
パワーカップルでも「質素に暮らしている」というのは、Aさん夫婦だけではない。
都内で教育関係の職に就いている女性・Bさん(33歳)は、広告代理店で働いている夫(36歳)と合わせて世帯年収は1400万円程度になるが「生活に余裕はない」と明かす。
「仕事をしながら小学生と幼稚園の息子2人を育てています。共働きで他の家よりは経済的に余裕があるように見えるかもしれませんが、ゆとりはまったくないですね。
夫も稼ぎはありますが、家事育児は基本的に私が隙間時間でやっていて、疲弊しています。
お互いの両親が、それぞれ地方に住んでいるので、祖父母のサポートが得られないのもネック。もともと23区内に実家がある夫婦と比べると、きつい思いをする機会は多いですね。
正直、光熱費も上がっているし、物価高の影響も感じています。
夫の会社に30分で行ける駅、駅徒歩5分以内の場所にマンションを賃貸で借りているので、2LDKでもかなり負担が大きいんですよ。
家賃と食費を考えれば、夫婦で贅沢する余裕なんてまったくないですよ。
車も持っておらず、必要な時はカーシェアを利用していますが、それでも一日中借りると高いですよね。
私も独身時代はフェイシャルエステや痩身エステ、美容室も月一で通うくらい美容が趣味でしたが、子どもができてからはそれどころじゃなくて、蓄財第一ですよ(笑)。
贅沢なんてとんでもないです。
基本はドラッグストアでコスメやシャンプー類も揃えていますし、通っていたジムも節約のために解約しました。
ただ、贅沢をしているわけではないですが、勤務先や子育てなど、都心での生活基盤ができてしまうと、普通に暮らしていても出費はかさみますね」(Bさん)
一見すると羨望の対象であるパワーカップル。しかし、東京23区内に暮らすパワーカップルは、決して派手で余裕がある生活をしている人たちばかりではない。将来のことも考えて倹約的な暮らしを心がけている夫婦は少なくないようだ。