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「タワマンは、巨大廃墟になる可能性」神戸市長がタワマン規制に注力する本当の理由が分かった

タワマンは「一時的なメリット」

販売すれば即完売。デベロッパーがタワマンを次々建てたくなるのも無理はない。

一方で、「たしかに自治体にとってもタワマンは魅力的だが、巨大な建造物が抱えるリスクを見て見ぬフリしてはいけない」と警鐘を鳴らすのが、'13年から神戸市長を務める久元喜造氏だ。

 

70を超えるタワーマンションを擁する神戸市は全国でもトップクラスの「タワマンシティー」だが、久元市長は4年前に条例を改正し、三宮など神戸の都心部での新規建設を制限した。

いわゆる「タワマン規制」だ。

その狙いはどこにあるのか。神戸市長の覚悟を聞いた。

 

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長期的な視点を持って街づくりのことを考えると、都心にタワマンが林立することのデメリットを無視するわけにはいかない―そんな思いから、'20年より(神戸市の)都心の「タワマン規制」を行っています。

 

たしかにタワマンは行政から見ても、魅力を持った建造物です。ひとつ建てれば数百、規模によっては数千人単位で人口が増えますし、周辺の商業施設も賑わうでしょう。

特に若い世代の人口が増えることは、自治体にとってはとても大きなメリットです。

 

しかし、そのメリットを享受できるのは一時的なんです。

30年、40年先のことを考えると、タワマンが抱えるリスクを直視しないわけにはいきません。

 

巨大な廃墟になる可能性

私は、タワマンは将来的に廃墟になる可能性が高いと思っています。

その理由について詳しく説明しましょう。

 

まず、タワマンを買う人の属性は、普通のマンションと違って非常に幅広いです。

居住目的で買ったファミリー世帯もいれば、高齢者夫婦もいる。

一方で、投資目的で買った人もいます。

 

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ひとつの居住空間に多様な人々が住んでいることは街としても決して悪いことではありません。しかし、タワマンには避けて通れない問題があります。それは修繕維持費です。

 

どのマンションにも修繕維持費の問題がありますが、もともとタワマンの維持管理費は高額なうえ、修繕積立金を大きく引き上げなければならないときに、住民の間で『高額な修繕費を払う』という合意形成がスムーズにできるのでしょうか。

 

タワマンは住んでいる人の数も多いうえに、所得も家族構成もまったく違うので、コンセンサスを得るのは難しいでしょう。

そうなると、大規模修繕は困難になります。

 

リスクを軽視してはいけない

実は私は、マンションの管理組合の理事長をやった経験が2回あります。修繕積立金の引き上げをやったこともありますし、大規模修繕工事を行ったこともあります。

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私が住んでいたのは、全36戸の小規模なマンションでしたが、その戸数であっても、全体の合意を得るのにはかなりの労力が必要でした。

その経験があるからこそ、巨大なタワマンでコンセンサスを形成するのがいかに困難かを想像してしまうのです。

 

修繕の合意が得られず、タワマンの老朽化が進めば「住環境が悪くなった」と引っ越す人が増えていきます。

それはだいぶ先の話かもしれませんが、住む人が減り、老朽化が進み、廃墟のようになったタワマンが街の中心部に残るかもしれない……そのリスクを軽視してはいけないのです。

人口は減少するけれど……

もう一つ、阪神・淡路大震災を経験した神戸市としては、災害リスクにも敏感にならなければなりません。タワマンの密集地で大地震が起こり停電や長期間の断水が発生すれば、その被害の甚大さは一般のマンションの比ではない。

 

多くの避難者が出ることになりますが、全員を収容できる避難所を、自治体が開設できるのか。災害への脆弱さも、見逃してはいけないタワマンのウィークポイントです。

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現在、神戸市の人口は減っています。'23年には人口150万人を割りましたが、今後、日本全体で人口が増加に転じる可能性はほとんどないと考えています。

タワマンを建てれば短期的に人口は増えるかもしれません。

 

しかし、やはり街づくりは10年、20年のスパンで見てはなりません。

デベロッパーも含め、国をはじめとした関係者間でタワマンの持続可能性について日本全体で議論がなされることを願っています。

 

海と山を持つ神戸市は自然と共生する町です。都心と郊外のバランスの取れた、将来にわたって持続可能な街づくりを考えることが大切なのです。

 

「神戸に廃墟を作ってはならない」という意志は今後一貫して受け継がれるのか。

あるいは将来、新たな「論理」を掲げた市長が登場し、神戸がさらなるタワマンシティーとなることもあるのか。

いまやタワマンを建てるか建てないかは、重要な政治アジェンダのひとつとなっているのだ。

 

 

週刊現代」2024年11月16日・11月23日合併号より