パチンコホールでは、ユーザーがパチンコやパチスロを遊技して得た出玉を景品に交換せず、会員カードに貯めておく「貯玉」サービスがある。
貯玉は後日遊技する際に使用でき、貯玉を使って遊技することを「貯玉再プレー」と呼ぶ。
ホール関係4団体は今年9月、貯玉再プレーにおける手数料に関する新たなガイドラインを制定し、風適法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)遵守を前提に貯玉再プレーにおける手数料徴収を解禁した。
この手数料解禁は、ユーザーにとってどんな影響があるのだろうか。
そもそも貯玉再プレー時の手数料は、かつてシステム管理費をまかなうものとして、多くのホールで設定されていた。
実際の金銭を手数料として支払うのではなく、貯玉再プレーをする度に、一定割合の貯玉が手数料として差し引かれるという形だ。
たとえば、4円パチンコの再プレー1回で125玉分が貯玉から引き落とされ、実際に払い出されるのが120玉であれば、その差分となる5玉が手数料となる。
しかし2012年4月、警察庁の通知によって貯玉再プレーにおける手数料徴収が禁止。その背景を、パチンコ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が説明する。
「警察庁の説明では、出玉はあくまでも遊技に使うものであり、それを手数料として徴収するのは実質的な換金行為にあたるから禁止する、というものでした。
ただそれだけでなく、一部のホールでは、特定のイベント日だけ貯玉再プレーの手数料を無料にしたり、貯玉再プレーを無制限にしたりするなど、集客ツールとして手数料を利用していたケースがあり、警察庁はそこを問題視したと言われています」
それから12年以上、ホールは貯玉再プレーの手数料を徴収できないままだったが、今年9月のガイドライン制定によって、その徴収が解禁されるのだ。
「貯玉システムの設備管理の経費を補填するための手数料、ということで今回解禁されました。当然、手数料をイベントの宣伝広告に活用するといった類のことはNGです」(藤井氏・以下同)
実際に9月のガイドラインでは、手数料の上限をシステム維持管理費の範囲内にすること、手数料に関する広告宣伝はしてはいけない、手数料導入の周知期間3か月を確保する、合理的な理由のない手数料変更は禁止などといった注意事項がある。
とあるホールが手数料導入に踏み切った背景
手数料を徴収されるとなれば、その分ユーザーの貯玉が減るということ。ユーザーにとってはあまり歓迎できないのもの事実だ。
「手数料が解禁されたものの、慎重になっているホールがほとんどです。やはりユーザーとしては手数料を取られない方がうれしいわけで、手数料を導入すれば手数料を取っていないライバルホールに客を奪われてしまう可能性がある。
手数料はシステム管理費を補うことはできても、集客的にはネガティブな要素になります」
そうしたなかで、宮城県のとあるホールが、2025年1月から貯玉再プレーの手数料を徴収すると発表したことが、パチンコユーザーの間で話題を呼んでいる。
今後、同様に手数料徴収に動くホールが増えていく可能性もありそうだ。
「手数料徴収を発表したホールはブログでその背景を説明しています。それによると現金派のユーザーと貯玉再プレー派のユーザーの平等性を保ちたいという狙いがあるとのこと。いわゆる三店方式での換金を合法としたうえでの話ですが、宮城県は等価交換ではないので、出玉を換金するよりも貯玉再プレーに回したほうがお得だという事情があります。
さらに、宮城県では“貯玉再プレー無制限”がローカルルールとなっている地域なので、貯玉再プレー派のメリットがより大きくなっている。
そういったなかで、現金派と貯玉再プレー派の平等性を保つために、手数料徴収に踏み切ったという話ですね。
また、パチンコのユーザーには一般のユーザー以外に“軍団”と呼ばれる一種のプロ集団がいます。
軍団では複数の会員カードを回して使うなどして貯玉を共有するといった不正が横行しているケースも多く、そういった点で一般の現金派ユーザーとの不平等が生じているとも考えられます。
これらの状況を踏まえると、多くのユーザーが平等に遊技できるようにするために、貯玉再プレーの手数料導入はそれなりの効果があるでしょう。
軍団については、一般のユーザーからは疎まれる存在ですし、ホールとしても軍団ばかりが出玉を得て、一般ユーザーが負け続けるような状況は避けなければならない。
そういった背景もあり、貯玉再プレーの手数料導入を真剣に検討するホールが増えてくるかもしれません」
「手数料が出玉に還元されるなら大歓迎」
さまざまな背景がある貯玉再プレーの手数料。その解禁について、一般のパチンコ・パチスロユーザーたちはどう考えているのか。
「貯玉で遊技したほうが毎回現金投資をするよりお得だというのはわかるけど、結局換金して利益を確定させないと意味がない。
そのうえ、再プレーに手数料がかかるとなれば、結構損をしている感覚になる。今後もずっと現金派です」(30代男性)
「換金した際の余り玉を欲しくもない景品と交換するのが嫌なので、余り玉が出たときは貯玉して、次回の遊技にまわしています。
そこに再プレー手数料がかかったとしても、ちょっとしたものだし、個人的にはあまり影響はない。これまで通り余り玉を貯めるだけです」(40代女性)
「基本的に出玉は一旦貯玉して、ある程度貯まったときにまとめて換金するというスタイルだったんですが、手数料を取られるのは単純に損になるので嫌。
ただ、徴収した手数料が出玉に還元されたり、軍団排除につながったりするのは歓迎です。もし私が通っているホールで手数料が導入されたら、ひとまずこれまで通りに貯玉再プレーをして、様子を見ようと思います。
明らかに損をしている感覚になってきたら、現金派に変わるかもしれません」(40代男性)
近年、遊技人口が減少傾向にあるパチンコ・パチスロ業界。貯玉再プレー手数料の解禁をいかにして人気回復につなげていくかにも注目したい。(了)